【気まぐれ童話】用務員さんの猫
今回も猫の短編童話です。気まぐれに語る童話をどうぞ。
おばあさんが育ったところは、タヌキさんとクマさんがお隣さんという山の中。
学校は小さな小学校しかありません。
学校には住み込みの用務員さんと猫のハナが住んでいました。
猫のハナは実はオス。
でも、前の猫の名前を付けたかったんだって。
おばあさんの楽しみは用務員さんの部屋に行くことでした。
目的はもちろんハナです。
ハナは寒さしのぎの専用の湯たんぽの上が大好き。
いつも湯たんぽの上で丸まっていました。
ある日おばあさんは大切なお友達と大喧嘩。
胸がつぶれそうで、気付くと用務員さんの部屋に来ていました。
用務員さんは何も聞かずに部屋に入れてくれました。
ハナがやさしい目をして見上げてくるので、おばあさんは泣きながらハナをなで続けたそうです。
ハナのしっぽが「いい子、いい子」というようにパタパタと揺れています。
その様子を見ながらなでていたら、おばあさんの気持ちも落ち着いてきました。
その時ガラッと音がして、さっきケンカした友達が入ってきました。
その子は何も言わずに歩いてくると、ばつが悪そうにハナをなで始めました。
ハナのしっぽはその子にも「いい子、いい子」というようにパタパタしています。
おばあさんとお友達は同時に声をあげていました。
「「さっきはごめんね」」
そんなおばあさんもお友達も、やがて上の学校に行く日が来ました。
実はその日は小学校も最後の日。
用務員さんとハナともお別れの日でした。
みんな泣きましたが、どうにもできません。
その日を境にハナとも会えなくなってしまいました。
おばあさんは今でも時々言います。
「ハナは全部わかってくれる最高の友達だったよ。」
用務員さんとともに村を出ていったハナ。
おばあさんの目には、いつまでもハナの姿が映っているようでした。
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原案・文:koroton