メジロ【庭にくる鳥たち】
お向かいさんのミカンに釣られて我が家にも寄っていくメジロ。花の蜜も大好きな超甘党で、目の周りを白くメイクしたおしゃれさんというイメージでしょうか。特に春はその緑の体が、咲き誇る花たちに彩りを添えます。そんなメジロを気まぐれに調べてみました。
メジロってどんな鳥?
メジロの特徴
メジロについての特徴をまとめると以下になります。
科目 | スズメ目メジロ科メジロ属 |
体長 | 約12cm |
体重 | 約10g |
翼開長 【翼を広げた長さ】 | 約18cm |
体色 | 雌雄ほぼ同色 ・基本色 頭・胸・背は緑褐色 羽はやや暗めの緑褐色 くちばしの下からのどは黄色 目の周りに白い縁取り 腹部は灰褐色 体側面は赤褐色 ・オス 腹部中央に黄色い線 顔の前面部と尾羽付け根下の羽(下尾筒)が黄色味がかっている ・メス オスにある特徴がない |
日本に住む野鳥の中では、ミソサザイ、キクイタダキに次ぐ3番目の小ささの鳥です。身近な鳥ではもっとも小さいといってもよいでしょう。
オスにはいくつか言われていることがあります。お腹の黄色い線が太いと強い、目の周りの白い部分が太い方がメスにモテる…。
しかしいまだ事実確認は取れていないため、鵜呑みにはしないでください。
メジロの鳴き声
まずはさえずりがこちら。
続いて地鳴き。普段はこんな風に鳴いています。
メジロの名前の由来
見た目のままに、目の周りの白いアイリングからきています。
英語でも「white-eye」といい、見たままの名前です。
メジロは『目白』のほかにもう1つ当て字がある
メジロは『繍眼児』とも書きます。この当て字は漢語からきているものです。目の周りの白い部分が、刺繍の縫い付けのように見えることを例えたことからきています。
実際にメジロの目の周りの白い部分は、光沢のある小さい羽です。まさに細かく縫い付けたように見えたことでしょう。
ちなみに「児」は「小さいもの」を意味しています。そんなメジロの名は、室町時代から知られていたものです。
メジロは3月21日の誕生鳥
誕生日に当てられているものの中に鳥もあります。メジロも使われていて、当てられた日は3月21日です。
花言葉があるように鳥言葉というものもあり、メジロの鳥言葉は「素直な心」。ちなみに鳥言葉の由来は不明です。
メジロの生態
概要
メジロの生態をまとめると以下になります。
分布 | インドネシア・日本・中国南部・台湾・韓国・フィリピン・東ティモール |
分類 | 留鳥と漂鳥に分かれる |
生息域 | 山地から平地の広葉樹林帯・農村部・住宅地【樹上性】 |
食性 | 雑食 ・花の蜜や果物を好む ・子育て期や冬季は虫なども捕食する |
性格 | ・警戒心は薄め ・負けん気が強い ・怖いもの知らずな一面もある |
天敵 | カラス・猫・ヘビ・猛禽類など |
寿命 | ・野生下3~5年【確認できたものでは最長6年11か月】 ・飼育下7~8年【10年以上も珍しくない】 |
メジロには旅する「漂鳥」と留まる「留鳥」がいる
メジロは花の蜜が大好きなため、花が咲き始めると開花に合わせて移動する個体がいます。南から北に漂鳥として移動するのです。
それほどまでに花の蜜が好きなため、地方によっては「はなすい」「はなつゆ」と呼ばれることもあります。
留鳥として生活している個体も、暑い季節は気温の低い山地に移動することも珍しくありません。繁殖のためにも、枝が密になった木のある場所を好むためです。
繁殖期が終わって寒さが増してくると、平野部に下りてきて群れを作ります。そのためメジロを観察する機会が増えるのもこのころからです。
メジロは小さい体で気が強い
メジロはその見た目に反してなかなか負けん気の強い鳥です。メジロと同様に甘いものが大好きなヒヨドリもなかなか気の強い性格をしています。
しかしメジロはそう簡単にはエサを独占させません。わずか12cmほどの体で、倍以上の28cm近いヒヨドリ相手にスキをうかがいます。
追い払われてもスキを見つけると戻ってくる。小さいながらも頑張り屋さんです。そんなメジロの様子はぜひこちらの動画でどうぞ。
メジロは『目白押し』の語源の鳥
普段よく聞く言葉に『目白押し』という言葉があります。『コトバンク』によると、
1 多人数が込み合って並ぶこと。また、物事が集中してあること。「今年は洋画の話題作が目白押しだ」
2 子供の遊びの一。大勢で横に並んで押し合い、列外に出た者がまた端に加わって押し合うもの。
という意味です。
この『目白押し』の由来はメジロの習性にあります。メジロはつがいで行動するときも、群れで行動するときも、枝にとまって休むとなるとピッタリ体をくっつけあうのです。
群れで行動しているときは、わざわざくっついてとまりあっている仲間の間に、無理やりにでも割り込もうとします。それも1羽や2羽ではありません。われ先にと何羽ものメジロが押し合いへし合いするのです。なぜメジロはそこまでくっつきあうことにこだわるのでしょうか。寒さから身を守るためとも、外敵から身を守るためとも言われていますが、実のところは不明です。
メジロの繁殖
メジロの繁殖の特徴
メジロの繁殖形態をまとめると以下になります。
繁殖期 | 4~7月 |
つがいの形態 | 一夫一妻制 |
繁殖回数 | ・北部では卵の個数を増やして回数を少なく ・南部では少数の卵で数回に分けて |
営巣場所 | ・木の股の近くなど複数の枝やそれに類するものがある場所 ・葉で巣が隠れる場所 |
巣の形・材料 | 巣の形 直径7cmほどのおわん型 材料 木の皮・枯れ草・コケなどで作り、クモの巣で吊り下げる |
抱卵担当 | つがい |
子育て担当 | つがい |
卵の数 | 3~5個 |
孵化までの日数 | 約11~12日 |
巣立つまでの日数 | 約11~13日 |
巣の衛生管理にも熱心な鳥で、ゴミはもちろん、ヒナのフンも親鳥がくわえて捨ててきます。
小柄で天敵が多いことから、この時期は特に警戒心が強いです。そのため巣の周りに人や動物の気配を感じると、予定よりも早く巣立つこともあります。
しかし子育ての期間が短くなるということは、その分だけヒナの成熟具合も未熟ということです。予定よりも早く巣立ったヒナの生存率は低くなることが予想されます。
巣を見つけたときは近づかないようにしてあげましょう。
メジロの仲間
メジロ
日本(北海道から九州・対馬・壱岐)・サハリン南部に生息する基亜種です。
額の黄色い部分が少なく、ない個体もいます。目の虹彩と呼ばれる部分は灰褐色の個体が多く、下くちばしの先端の黒い部分が不明瞭なのも特徴です。
イオウトウメジロ
硫黄列島に住んでいるメジロの亜種です。最近では小笠原諸島にも入り込んでいます。
のどの黄色部分や体側面の赤褐色の部分が薄めです。目の虹彩は赤みがかっています。くちばしは太く、下くちばしの黒色部が基亜種よりもはっきりしているのが特徴です。
シチトウメジロ
伊豆諸島に住んでいるメジロの亜種です。こちらも小笠原諸島に移住が確認されている亜種です。移住先の小笠原諸島では、イオウトウメジロとの交雑が必然的に行われています。
のどの黄色味は薄く、体側面の赤褐色部分も淡いです。目の虹彩はやや赤みがかっています。基亜種よりもくちばしが太くて長く、下くちばし先端の黒色部がややはっきりしているのが特徴です。
ダイトウメジロ
南大東島と北大東島に住んでいるメジロの亜種です。
額の黄色い部分が広くてはっきりしています。のどの黄色い部分も広く、目の輪郭にまで届くのが特徴です。
シマメジロ
種子島と屋久島に住んでいる個体群で、少々問題にもなっているメジロの亜種です。トカラ列島にすむ個体群こそシマメジロだとする説があり、論争となっています。
しかし両種を比較した場合、体色やくちばしの特徴に違いが判明しているのも事実です。見た目にも明確な違いがある以上、2つの個体群を分類するべきとする声もあります。
そのため近いうちに別々の亜種となる可能性も捨てられません。
種子島・屋久島の個体群
上面が基亜種よりもはっきりとした緑色です。体側面や胸に大型で濃い目の赤褐色模様があります。
腹部中央や尾羽下の羽(下尾筒)の黄色部分も濃くて大型、さらに下くちばし先端の黒色部は不明瞭です。
トカラ列島の個体群
体側面と胸の赤褐色部分が淡く、くちばしは種子島・屋久島の個体群よりも太くて長いです。
リュウキュウメジロ
奄美大島以南の南西諸島にすむメジロの亜種です。
体側面と胸に赤褐色の部分がなく、明るい灰褐色をしています。
それぞれ特徴が異なる
いずれの亜種も体色のほか、くちばしの太さや長さ、色合いなどに特徴があります。
しかしメジロらしい目の周りの白い模様は共通し、かわいらしい姿も一緒です。
メジロはウグイスと間違えられる?
メジロは花の蜜が大好きなため、梅や桜の花の蜜を吸いに庭にもよく姿を見せます。同じころによく通る声でさえずるウグイスも、春を告げる鳥として昔から親しまれてきました。
そのためかメジロはウグイスともよく間違われてきたのです。
メジロとウグイスの違い
メジロは甘いものが大好きなため、花の蜜をよく吸う姿が観察されます。ウグイスもメジロと同じ雑食性ですが、滅多に蜜を吸うことはありません。
メジロは警戒心が比較的緩めで観察もしやすい鳥です。ウグイスは警戒心が強く、声を聞くことはあってもなかなか姿を見ることはできません。
見た目も並べてみればはっきりと異なることがわかります。
まずは問題のウグイスから。
次にこちらがメジロです。
このように体の色も目の周りも、両者ははっきりと違います。緑の小鳥を見かけたときは、まずは目の周りを観察すると間違えにくいです。
メジロと人間の付き合い
メジロはペットとしても人気だった
2011年に「鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)」が改正されるまで、メジロは都道府県に捕獲許可及び飼養登録申請をすれば飼うことができました。
ただし1世帯につき1羽のみ、自治体によっては許可が下りないところもあったのです。
今でもメジロは人気の小鳥で、和歌山県と大分県では県の鳥に指定されています。しかし現在では捕獲も飼育も禁止された鳥です。もし弱ったメジロを保護したときは、速やかに自治体に連絡を入れて判断を仰いでください。連絡を入れないと違法行為として罰則を受ける可能性があります。
人気の遊び『鳴き合わせ』
メジロはその声のよさから昔からペットとして人気でした。
明治17年になって、村上定太郎という人が『鳴き合わせ』という競技を考案します。さえずりの美しさや鳴く回数の多さを基準に優劣を競わせたのです。
実はこの『鳴き合わせ』は、現在でも西日本を中心に続いています。特に大阪が本場とされ、優勝するようなメジロには「横綱」や「大関」などの称号も与えられるのです。
そのような称号持ちのメジロは数百万の値で取引されることもあります。賭博の対象や暴力団の資金源としても使われるなど、多くの問題も指摘されているのです。
なくならない密猟
今でも暴力団や一部の愛好家たちにより、メジロをはじめとした野鳥の乱獲が問題になっています。
『鳴き合わせ』で重要なのは、巣立ち直前のヒナの英才教育です。さえずり方を付け仔と呼ばれる鳴き方の上手な個体から学ばせたり、横綱の鳴き声を録音したテープを聞かせたりして覚えさせます。
そのためにも巣立ち直前のヒナを捕まえることが重要です。違法なかすみ網を使って、メジロを含めたさまざまな鳥たちを乱獲します。
しかも捕まえた鳥のうち目的のメジロのオスだけを残して殺してしまうのです。さえずらないメスまで殺してしまうため、生態系の破壊まで懸念される事態です。
抜け道に使われるヒメメジロ
規制も強化しているものの、亜種のヒメメジロを中国から輸入して抜け道にする悪質業者もいます。輸入証明書だけを密猟したメジロに付けて販売するのです。そんな業者と知りつつ購入する愛好家も少なくなく、どちらも問題になっています。
輸入されたヒメメジロも殺されたり放されたりしているのです。生態系への影響はもちろん倫理的にも問題視されています。
もしメジロを売っている業者がいたら、一度日本野鳥の会や環境省などに問い合わせをしてみるとよいでしょう。ヒメメジロとの見分け方を示したリーフレットなどを製作しています。
メジロを愛するならメジロの幸せも考えたいものです。
我が家に寄っていくメジロたちへ
我が家でメジロが活発に動いているのを見かけるのは、庭の柿が熟してからです。ただし彼らの細いくちばしでは柿の皮は突き破れないほど固いもの。ほかの鳥がつついた後でないと食べられないため、ちょっと残念そうにしています。
一部は残しておくようにするからほかの鳥に負けずに味わってね。