モモンガ(ニホンモモンガ)【身近にいる動物たち】

2023年1月7日

動物図鑑Private Zoo Gardenより引用(紹介者どれみふぁピカイト様)

夜の森の中を滑空する四角い影といえばモモンガが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。しかし普段は森の中でもなかなか見ることができません。そこでモモンガについて気まぐれに調べてみました。

 

モモンガってどんな動物?

特徴

モモンガの特徴をまとめると以下になります。

科目 ネズミ目(齧歯目:げっしもく)リス科リス亜科モモンガ族モモンガ属
体長 14~20cm
しっぽの長さ 10~15cm
体重 150~220g
体色 雌雄同色

・頭から背と体上面は茶褐色または灰褐色

・口下からのど、腹にかけて白

・しっぽは全体が茶褐色

体型 ・大きくぱっちりした目

・前脚から後脚にかけて被膜がある

・前脚付け根に「針状軟骨」があり、これを開くことでより大きく被膜を張れる

・尾は平たい

 

モモンガには多くの仲間がいる

モモンガが属するモモンガ族には15属もあります。その中にはムササビなども含まれ、約45種のモモンガの仲間が属しているのです。

属の多さに比べると種の数は少なめですが、亜種も含めるとさらに多くなります。

 

ムササビとモモンガの違いは?

同じモモンガ族ですが、ムササビはモモンガよりもはるかに大きいです。ムササビは別名「空飛ぶ座布団」と呼ばれるのに対し、モモンガは「ハンカチ」ほどしかありません。

顔つきもはっきり違います。ムササビは目が正面についていて、大きさも特筆するほどではありません。モモンガは大きくぱっちりとした目をしています。

さらに被膜の発達具合も大きな違いです。ムササビは前脚と後脚の間だけでなく、後脚と尾の間にまで飛膜が広がっています。モモンガは前脚と後脚の間だけです。

フンの形にも違いがあります。ムササビは真ん丸い形なのに、モモンガは俵型です。

最後に生息域があげられます。ムササビは人里近くから山地までと幅広く生息している動物です。しかしモモンガは人里よりも山地が好みの生息域です。

もちろん生息域が被っていることもありますが、それぞれ競合することなく平和に暮らしています。

 

名前の由来

平安時代中期に作られた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』巻十八によると、平安時代にはムササビと区別されていませんでした。そのためモモンガも「ムササビ」やその別名である「モミ」と呼ばれていたのです。

やがて「モミ」が「モモ」に転じ、江戸時代には「モモングァ(摸摸具和)」という語形が生まれます。

その後「モモングァー」「モモンガー」を経て、最終的に「モモンガ」に落ち着きました。

 

「モミ」から変化した「モモ」や「モマ」は今も残っている

モモンガの古名である「モモ」や「モマ」は方言語形として各地に残っています。

ただし意味するのはモモンガではありません。多くの場合はムササビや化け物を意味する言葉です。

 

本州では妖怪扱い?

方言として残っているモモンガの古名は化け物を指すことがあります。これはかつて本州でモモンガが妖怪扱いされていた名残です。

そのため地域によっては子供を脅すときなどに「ももんがぁ」ということがあります。

 

どのくらい飛べる?

モモンガは「滑空飛行」と呼ばれる飛び方なので、厳密には飛んでいるのではありません。鳥のように羽ばたくこともなく、高いところから風を受けて落ちていくのが正しい認識です。

モモンガは針状軟骨と呼ばれる特殊な針状の骨を持ち、これを広げることで限界まで被膜を広げます。目一杯に広げた被膜に風を受けて遠くまで滑空していくのです。

その距離は高さ10m以上のところからなら無風状態でも10~15mほど飛ぶことができます。風に乗れば40~50m、長ければ100mほど飛んで移動することが可能です飛行時の最大速度は秒速約16m。かなりの速度です。

小柄ながら高速でかなりの距離を飛ぶことができることがわかります。

 

モモンガの生態

概要

モモンガの生態をまとめると以下になります。

分布 ・北海道(タイリクモモンガ亜種:エゾモモンガ)

・本州、四国、九州(ニホンモモンガ)

生息域 山地から亜高山帯の森林、混交林、社寺林、スギ林など
活動時間 夜行性
冬眠の有無 冬眠しない
食性 植物性(雑食とする説もある)

【木の葉や木の実、芽、樹皮、スギ花粉など】

性格 神経質で臆病だが個体差も大きい
天敵 フクロウなどの猛禽類・テン・ヘビ・ハクビシンなど
寿命 野性下では5年ほど・飼育下では10年ほど

 

日本に住むモモンガの種類

モモンガと一般的に言われているのはニホンモモンガです。

これは日本固有種で、さらに青森県から奈良県の個体群をホンシュウモモンガ、京都から鳥取の日本海側の個体群をサンインモモンガ、九州の個体群をキュウシュウモモンガとする場合もあります。

また北海道にはエゾモモンガがいますが、こちらはタイリクモモンガの亜種でニホンモモンガとは別種です。ただし日本固有の亜種でもあります。

・エゾモモンガについて詳しくはこちら

 

モモンガの生態はまだ謎が多い

モモンガは夜行性の上、研究家が少ない動物です。そのため食性についてもまだ完全に解明されていません。

森林にすむ動物でもあることからさらなる研究が急がれています。

 

モモンガの繁殖

※版権:いーさん。様(https://twitter.com/nmrmnk_e_san/status/1591292140562567168)

特徴

モモンガの繁殖の特徴をまとめると以下になります。

繁殖期 5~7月ごろと言われているが年2回繁殖する説もあり

【飼育下では2月にも繁殖の記録がある】

つがいの形態 一夫多妻
営巣場所 ・キツツキなどが開けた木の穴や巣箱など

・杉の葉を集めて木の股に作ることもある(写真)

子育て担当 メス
子供の数 1~6匹【通常は2~3匹】
妊娠期間 30日ほど
授乳期間 1ヶ月半

 

モモンガは飼える?

日本モモンガは絶滅危惧種

モモンガは森林を住処にしている動物です。近年開発によって森が分断され、穴があるような古い大木が切られるなど、生活環境の悪化が問題視されています。

実際に生息数は減少していて、自治体の絶滅危惧種に指定されることも増えているのです。

東京では絶滅扱い、愛知・滋賀・兵庫・岡山・福岡・熊本・宮崎では絶滅危惧I類、茨城・神奈川・三重・奈良・和歌山・京都・鳥取・山口では絶滅危惧II類になっています。

ほかでも多くの県で減少し続けているため、早急の研究と対策が求められている動物です。(日本のレッドデータ参照)

 

アメリカモモンガなら飼育できる

現状では飼育できるモモンガはアメリカモモンガだけです。かつてはタイリクモモンガも飼育できましたが、現在では特定外来種に指定されています。そのため様々な制約があり、許可なく飼うこともできません。

フクロモモンガも飼うことができますが、こちらはカンガルーなどと同じ有袋類で別種の動物です。

 

野性のモモンガは人と共通する病気を持っている

2005年のことです。ペット用に輸入されたアメリカモモンガを扱った静岡市内の業者の従業員2人が、レプトスピラ症という病気を発症しました。

感染症の蔓延を防ぐための法律である通称感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で四類感染症に指定されている病気です。

インフルエンザよりも危険とされる病気の1つで、発症した従業員は高熱と血尿の症状とともに、多臓器不全の状態でした。

結局輸入されたアメリカモモンガ108頭はかわいそうですが全て炭酸ガスで安楽死後、焼却処分されています。それ以降規制が強化されたため安全性は増しましたが、人と共通する病気を持っていることは知っておくべきです。

 

空飛ぶぬいぐるみ?

日本の固有の動物の中でも目立って愛くるしいモモンガ。しかしその数は確実に減少傾向です。一方でスギ林が大好きという研究結果も上がるなど、保護活動が急がれています。

いつまでもそのかわいらしい姿が残り続けますように。

注:※印の付いた写真は版権者様の許可をいただいて掲載しております。版権者様の許諾なく流用しないでください。

 

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Posted by koroton