シャガ【庭の草木や花々】
我が家の蝋梅の木の下にはシャガが群落を作っています。放っておいてもたくましく育って毎年花を付けるシャガ。そんなシャガについて気まぐれに調べてみました。
シャガってどんな植物?
シャガの基本情報
園芸分類 | 草花 |
形態 | 多年草 |
原産地 | 中国東部~中部 |
草丈 | 30~50cm |
開花期 | 4~5月 |
花色 | 白・青・薄紫 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
シャガの特徴
アヤメ科の花の中では真っ先に咲き始めるのがこのシャガです。
直径5cmほどの小ぶりの1日花を次々と咲かせます。6枚の花弁のうち大きい3枚には紫と黄色の斑模様が入り、目を引く姿の花です。
葉はアヤメ科の植物らしく鮮やかな緑色の剣状の葉をつけます。根元から互い違いに葉を出すものの、左右どちらかに傾いて伸びるのが特徴です。そのためか葉先は垂れ下がります。常緑性のため生け花にもよく用いられる植物です。
原産地の中国のシャガには種を付ける品種があります。そのため変異をすることがあり、いくつかの優れた品種も作られているのが特徴です。
しかし日本のシャガは染色体の数が三倍体と特殊なため種はつけません。変異をする機会がないだけでなく、日本のシャガのすべてが1本の株から分けられたクローンです。
事実、シャガは地下茎を切り分けて増やすしかない花です。そのためシャガのある所はかつて人が植えた場所だけになります。
日本のシャガは帰化植物
シャガは学名をIrisu japonicaといいます。直訳すると「日本のアヤメ」。中国原産なのになぜそうなったのかは、名付け親の植物学者に聞くしかありません。
ちなみにシャガは室町時代の『山科家礼記』(1412~1492年)の終わり近く、1491年の部分に「しゃくわ」と記載されているものが最古といわれています。さまざまな文献に登場するようになったのは江戸時代に入ってからです。
これらのことからシャガが日本に入ってきたのは室町時代ごろと推察されます。なお耐寒性にやや難があることから北海道では自生が見られません。
シャガの異名
シャガは漢字で「射干」あるいは「薯莪」と書きます。一般的には「射干」の方が使われますが、元々は「ヒオウギ」という別のアヤメを意味しました。いつの間にかすり替わって使われるようになったのです。
そんなシャガは花が次々と咲く様子から「胡蝶花(コチョウカ)」とも呼ばれます。かわいらしい別名に反し、群生して多くの花をつける様に「怖い」と感じる人もいる花です。
シャガの花言葉は?
シャガの花言葉は「反抗」「友人が多い」です。「反抗」は剣先のような鋭い葉の形と、人が踏み入らないような日陰でも花を咲かせる様子からつきました。
一方で「友人が多い」は、種を作らない性質ながら群生して花をたくさん咲かせることが由来です。
シャガは薬?毒?誤食に注意
シャガの根は「白花斜干」と呼ばれる生薬として、扁桃腺炎の緩和に使われます。しかしシャガの根には「イリシン」という成分が含まれており、これが毒性がある物質です。素人が薬として口にすると下痢や嘔吐を引き起こす危険性があります。安全性を考慮して決して誤食しないでください。
シャガの品種
スジシャガ
別名「斑入りシャガ」と呼ばれる品種です。300年以上の歴史があり、江戸時代から育てられてきました。葉の中心や縁に白い筋が入るのが特徴です。
ヒメシャガ
シャガとは近縁種に当たる植物で、環境省のレッドリストで「純絶滅危惧種」に指定されています。日本全国の山地に自生していますが、シャガよりも小型です。
花は一重と八重のものがあり、花の色も白と薄紫があります。冬になると地上部が枯れる点もシャガと異なる植物です。
中国青花シャガ
その名の通り中国で発見された品種で、濃い青紫色の花を咲かせます。直径3cmほどの小型の花をたくさん咲かせ、草丈も30~40cmほどです。このシャガも常緑のため、グラウンドカバーによく利用されます。
【シャガの基本種はこちら】
シャガの育て方
日当たり
明るい日陰を好みますが、常緑樹の下草としても十分に育ちます。ただしあまりに日が当たらなさすぎると、花つきが悪くなるので要注意です。
土
やや湿り気のある環境を好みますが、土質としては水はけがよい方がおすすめです。市販の培養土か、小粒の赤玉土7に対し腐葉土を3配合した土を用意しましょう。水持ちの悪い乾きやすい土は向かないので注意してください。
植え付け
シャガの植え付けは4~6月か9~10月が適期です。花が咲いている状態で植え付けしても問題ありません。根茎が土に隠れる程度に浅く植え付けるようにします。鉢植えの場合は5号鉢に1株が目安です。地植えの場合は植え付け場所に腐葉土をすき込むとよいでしょう。どんどん広がる強い植物なので広い場所に植えるのがおすすめです。
水やり
シャガはやや湿り気がある環境を好みます。植え付けて根付くまでは土が乾燥しないように水やりをしてください。
根付いた後は丈夫な植物のため、地植えの場合は基本的に水やりをする必要はありません。ただし雨が長期にわたって降らない場合には水やりをします。鉢植えの場合には土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをすれば大丈夫です。夏場は乾燥のしすぎに注意してください。
肥料
地植えの場合は特に必要ありません。鉢植えの場合は花の後に大きめの油かすの玉肥を5号鉢で2~3個与えます。
葉の色が悪くなってきたら、2~3週間に一度、窒素・リン酸・カリを等量含んだ液肥を与えてください。
元々丈夫な植物なので基本的に肥料は少なめで大丈夫です。
植え替え
地植えの場合は必要ありません。むしろ増えすぎて予定外のところに生えてくることもあります。その場合には抜いて処分するか、別の場所に植え替えてください。鉢植えの場合は毎年花の後に植え替えをします。成長が早いため簡単に根詰まりを起こすためです。新しい土を用意して育てられる分だけを残して植えなおします。
増やし方
シャガは種を付けないため株分けしか増やす方法がありません。植え替えのときに株分けをすると無駄がないのでおすすめです。
株分けの方法は、まず根についている土を落とし、1株当たり3~5芽をつけて切り分けます。さらに葉を1/3ほど切り落としてから植え付ければ完了です。
葉を切り詰めることにより水分の蒸散を予防し、根付きをよくする効果が期待できます。
病害虫
シャガは丈夫な植物のため滅多に病害虫が発生することはありません。ただし春ごろに葉に黄色い縁取りの赤褐色の斑点が出ることがあります。さび斑病です。カビによる病気のため、広がる前に発生した株を抜き取り焼却処分します。
冬越し
シャガはやや耐寒性に欠ける植物です。そのため地植えにする場合は最低気温が0℃以上ある場所がよいでしょう。
0℃を下回ると葉が枯れることもありますが、-5℃くらいならビニールなどで保護してあげれば根茎は残ります。
鉢植えの場合は家の中に取り込むと安心です。
シャガの名所
【福島県】高蔵寺
いわき市にあるシャガの名所で、ゴールデンウィークから5月中旬まで見頃を迎えます。杉木立の中に立つ三重塔とのコントラストが美しく、人気のスポットです。
2022年5月4日の様子はこちらの動画でどうぞ。
【京都府】綾部市・老富
3月中旬~4月中旬には黄色いミツマタに彩られ、ミツマタが終わると今度はシャガが一斉に咲き出します。
見頃は4月中旬~5月中旬で、日本でも有数のシャガの名所です。杉林の中の林道から一面のシャガの花を観賞できます。
見頃を迎えた時の様子はこちらの動画をどうぞ。
蝋梅の下を彩る花
我が家では蝋梅の下草としてシャガを植えています。冬場は寒すぎるのか葉が色落ちしますが、それでも毎年元気に咲いてくれるけなげな花です。
とはいえその生命力はかなりのもの。どんどん広がるので地植えにする場合は注意してください。