ジンジャーリリー【庭の草木や花々】

2022年5月6日

秋の訪れを告げるように家のすぐ南側に群落で咲く白い花。蝶のような形に強く甘い芳香で存在感も抜群です。花の名前はジンジャーリリー。そんなジンジャーリリーについて気まぐれに調べてみました。

ジンジャーリリーってどんな植物?

ジンジャーリリーの基本情報

園芸分類熱帯植物・球根
形態多年草
原産地インド~東南アジア
草丈80~200cm
開花期8~10月
花色白・オレンジ・黄・赤・ピンク・複色
耐寒性普通
耐暑性強い

ジンジャーリリーの特徴

ジンジャーリリーはショウガ科ヘディキウム(シュクシャ)属の植物です。ジンジャーとつきますが、薬味などで使われるいわゆる生姜はショウガ属で植物としては異なります

東南アジアを中心として70~80種類が分布していますが、一般的に流通している多くは園芸種です。キューバでは国の花に指定されるほど愛されていて、日本でも数多くの園芸種が作られました。

そんなジンジャーリリーが日本に入ってきたのは江戸時代末期の安政年間です。その花の美しさと甘い香りから、明治以降に広く栽培されるようになりました。

新しい品種は古くからある品種よりも1月ほど早く開花します。古い品種は夏の終わりからが開花期です。

ジンジャーリリーの花の咲き方

ジンジャーリリーは花期になると中央からまっすぐに茎を伸ばします。頂上部分に穂状に花をつけるのが特徴で、花の直径は1cmほどの小花から8cm以上の大花までさまざまです。

花序(かじょ)と呼ばれる咲き方で、花をつける穂状の部分は15~30cmの長さになります。

穂の中から蕾を出して咲いていきますが、花が一斉に咲く品種と順番に咲いては終わりを繰り返す品種があり、個性もさまざまです。咲いている様子を見て品種を選ぶのもよいでしょう。

ジンジャーリリーの花の形

ジンジャーリリーの花はかなり複雑な構造をしており、外花弁、中花弁はそれぞれ3枚が根元でくっついた形をしています。

そしてひときわ大きな花びらのように見えるものが雄しべです。雄しべの先端は長くせり出していて、その先に雌しべがついています。

ジンジャーリリーは要注意外来種

ジンジャーリリーは花の後に赤みがかったオレンジ色の実をつけます。実はこの実が鳥の大好物なのです。鳥に運ばれた実は野生化し、中でも小笠原諸島や南西諸島では定着が大問題になっています。

固有種が多い両地域はジンジャーリリーにとっても好環境な土地柄です。在来の植物を押しやりかねない繁殖を見せている植物として、環境省も要注意植物と認識しています。現在は要観察扱いですが人気の植物だけに難しい話です。

ジンジャーリリーの名前の由来

ジンジャーリリーは一般的にはジンジャーと呼ばれます。「リリー」はユリの花に似ていることからつきました。

和名の「ハナシュクシャ(花縮砂・花縮紗)」は漢方薬に使われる「縮砂(縮紗:シュクシャ)」と実がよく似ているためです。そこから「花の咲く縮砂」で「ハナシュクシャ」とつきました。

ただし縮砂は同じショウガ科の植物ですがアモムム属に属します。そのためジンジャーリリーとは全く別種の植物です。少々ややこしいですね。

ジンジャーリリーの花言葉

ジンジャーリリーは甘くてよい香りのする花です。その香りのよさから「豊かな心」「慕われる愛」という花言葉がつきました。このほかに「信頼」という花言葉もあります。一方でショウガ科の植物でありながら花にしか価値がないことから「無駄なこと」という花言葉もつきました。贈り物として使うときには注意が必要です。

ジンジャーリリーは食べられるの?

ジンジャーリリーはショウガの仲間ですが食用としている生姜とは属が違います。そのため基本的には園芸用品種なので食用でも薬用でもありません

しかしジンジャーリリーの中には薬用の品種もあります。だからといって食べてみようとは思わないでください。一般に出回っているのはあくまで花を楽しむための園芸品種です。素人判断で食べた場合、安全性に保障はありません。

ジンジャーリリーの品種

ハナシュクシャ(花縮砂)

ジンジャーリリーの中でも代表的な品種で、ホワイトジンジャーやバタフライリリーなどさまざまな別名を持ちます。

インドから東南アジアまで幅広く分布し、各地で野生化して問題になっているのもこの品種です。

ベニバナシュクシャ(紅花縮砂)

インドやヒマラヤ原産のジンジャーリリーで、オレンジや赤といった色味の強い品種です。草丈は1~1.5mになり、花には強い芳香があります。

キバナシュクシャ(黄花縮砂)

ヒマラヤ周辺が原産地のジンジャーリリーです。草丈は1.5~2mとほかのジンジャーリリーの中でも大型の品種になります。

花は黄色い花弁に赤い雄しべが印象的で、花序が50cmにもなることがあるジンジャーリリーです。花には強い芳香があり、数多くの園芸品種が流通しています。

ニクイロシュクシャ(肉色縮砂)

インド・ネパール周辺原産の比較的新しい品種です。1815年に発見されて、日本に輸入されたのは昭和に入ってからでした。

花穂の圧倒的存在感に対して香りはやや弱く、サーモンピンクの花が特徴的です。草丈は1~2mと、こちらも大柄といえます。

ジンジャーリリーの育て方

日当たり

日当たりを好みますが、夏は午後から日陰になるような場所がおすすめです。

腐植質に富んだ肥沃な土を好みます。また熱帯の植物らしく乾燥に弱いため、水持ちのよい土質がおすすめです。

植え付け

4~5月が植え付けの適期です。土の温度が低いと発芽しないため、温かくなってきてから植え付けます。

植え付けるときには球根の切り口部分などに傷みがないかを確認しましょう。もし腐っていたら傷んだ部分を切り取って植え付けます。

腐った部分を放置して植え付けると、芽が出ないままダメになってしまうことがあるため要注意です。

地植えの場合

ジンジャーリリーは大きくなるため基本的には地植えにします。40~50cmほど深く耕し、芽は南側に向けて植え付けてください。覆土は球根の上から3~10cmほど被せます。

株間は40~80cmほどはあけましょう。成長力のある植物のため広い場所に植え付けます。

鉢植えの場合

ジンジャーリリーは大きくなるので最低でも6号鉢に植えつけます。乾燥を防ぐため覆土は5cm以上は被せましょう。

植え付ける球根の数は1鉢1つのみです。それでも鉢が小さいと成長しきれず花が咲かないことがあります。

水やり

地植えの場合は基本的には必要ありません。夏場に一週間以上雨が降らない場合は水やりしてください。冬の休眠期は乾燥しても大丈夫です。

鉢植えの場合は土の表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。休眠中は水やりを控え、乾燥気味に管理してください。

肥料

ジンジャーリリーは花を楽しむ植物です。長期にわたってたくさんの花を咲かせるため、多くの栄養を必要とします。

植え付ける前には元肥として、完熟堆肥腐葉土などの緩効性肥料を意識して多めに混ぜ合わせておきましょう。

5~10月の生育期には月に1回ほど緩効性化成肥料を置き肥えします。

鉢植えの場合にも忘れず置き肥えをしてください。水やりの代わりに10日に1度、液肥を与えるのもおすすめです。

植え替え

地植えの場合は4~5年に1度、掘り返して分球し植え替えします。成長の早い植物なので、多くの球根は処分するか人にあげるかしてください。

なお鉢植えの場合は毎年植え替えしないと根詰まりしてしまいます。掘り起こした球根は乾燥させないようにすぐに埋め戻すようにしましょう。植え替えの適期は4~5月です。

花茎切り

花が終わったら種に養分をとられないために花茎を切り落とします。こうすることで来年に向けて球根を太らせることが可能です。

翌年もキレイに咲かせるために地力を蓄えさせましょう。

増やし方

種は花茎を切り落とすため基本的には分球で増やします

成長力があることから球根もどんどん増えます。むしろ増えすぎるくらいなので、庭の広さに合わせて間引くくらいがちょうどです。

病害虫

ヨトウムシがつくことがありますが基本的には病害虫は気にするようなことはありません。もし葉に食害の後が見つかったら専用の殺虫剤を使うとよいでしょう。

冬越し

そこそこ耐寒性はあるので、暖地ならば地上部が枯れた後に刈り取り、敷きワラや腐葉土で覆えば大丈夫です。

ただし寒冷地の場合には根を掘りあげ、湿らせたバーミキュライトやおがくずなどに埋めてから凍らない場所で保管します。大きい器に切り分けずに保管すると安心です。

鉢植えの場合は地上部が枯れたら刈り取り、そのまま凍らない場所で休眠させてください。

たくましい植物

我が家のジンジャーリリーは、母が畑の隅に捨てられていた株を持ち主の許可をもらって拾ってきたものです。植え付けた後はほったらかしで、枯れたら上を刈り取る程度にしか相手にしていません。

植えた場所も1年中ギンギンに太陽が当たる場所。水やりも肥料も全然なし。霜が降ろうと、10cmを超える雪に覆われようとお構いなしというひどい扱いです。

なのに気付けば隣のアイリスを追いやって、今では抜かないと広がりすぎという強靭な生命力を見せつけられています。君、-5℃でもケロッとしていて本当に熱帯の植物なの?

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Posted by koroton