ウグイス【身近にいる鳥たち】
宅地化が進んだせいか、今年は自宅で声を聞いていない鳥がいます。ウグイスです。以前は近くでさえずる声がしたのですが、今ではちょっと出ないと声を聞けなくなりました。今回はそんなウグイスについて、気まぐれに調べてみました。
ウグイスってどんな鳥?
ウグイスの特徴
ウグイスの特徴をまとめると以下になります。
科目 | スズメ目ウグイス科ウグイス属 |
体長 | オス16cm、メス14cm【スズメとほぼ同じかやや小さめ】 |
翼開長 【翼を広げた長さ】 | オス21cm、メス18cm |
体重 | オス約20g、メス約12g |
体色 | 雌雄同色 ・頭から背、翼、尾羽にかけて暗緑茶色(オリーブ色) ・くちばしからのど、腹部にかけて薄めの灰白色 ・目の前後に茶色の線と、その上に白線 |
体色は「鮮やかな緑色」を連想しがちですが、実際には異なります。オスとメスで体色に違いはないため、大きさが判断基準です。
ウグイスの鳴き声
ウグイスの鳴き声としてよく知られている声は「さえずり」です。さえずりのほかにも「地鳴き」「谷渡り」と呼ばれる鳴き方をします。
さえずりは【こちらの動画】でどうぞ。
地鳴きは【こちらの動画】でどうぞ。
谷渡りは【こちらの動画】でどうぞ。
動画でもわかるとおり、さえずりと地鳴き、谷渡りは大きく違います。ウグイスのさえずりは、縄張りを主張するためにする特別な鳴き方です。地鳴きは普段の鳴き方、谷渡りは警戒を意味します。
ウグイスは日本三鳴鳥の1つ
日本三鳴鳥とは鳴き声が美しいとされる3種の鳥です。いずれもスズメ目で、以下の3種になります。
・ウグイス
鳴き声は【こちらの動画】でどうぞ。
・オオルリ
鳴き声は【こちらの動画】でどうぞ。
・コマドリ
鳴き声は【こちらの動画】でどうぞ。
青森県と秋田県の県境にある十和田湖で、まとめて観察することができます。いずれもさえずりが称えられる鳥です。
ウグイスの生態
概要
ウグイスの生態をまとめると以下になります。
分布 | 東アジア |
繁殖域 | ・南西諸島を含む日本 ・サハリン |
越冬域 | ・南部・東南部中国 ・台湾 |
分類 | 留鳥【寒冷地で漂鳥または渡り鳥】 |
生息域 | 日本ではほぼ全国の平地から高山帯 |
生活圏 | ササの多い林や藪(やぶ) |
食性 | 雑食性 ・夏場はおもに昆虫やクモなど ・冬場は植物の種子や木の実も含む |
性格 | 警戒心が強い |
寿命 | 2~5年【長いと8年ほど】 |
ただし亜種を含めた広義でみる場合、ウグイスの分布・繁殖域・越冬域は以下が追加になります。
分布 | 東アジア |
繁殖域 | ・南東シベリア ・中国東北部 ・朝鮮半島 ・ハワイ諸島(日本からの移入) |
越冬域 | 東南アジア |
ウグイスは伝統的に狭義と広義の種がありました。種類分けもたびたび変わり、狭義と広義で含まれる種は時代により異なります。
日本在来の種として見た場合は上の表のみでの取り扱いが適切です。
ウグイスの繁殖
特徴
ウグイスの繁殖形態をまとめると以下になります。
繁殖期 | 5月中旬~9月ごろまで【地域により前後する】 |
縄張りの広さ | 直径200mほど |
つがいとなるメスの数 | 6~7羽 |
巣作り担当 | メス |
巣の形・材料 | 30~80cmの低地に、枯れ葉などで横穴式のつぼ型の巣を作る |
子育て担当 | メス |
卵の大きさ | 長径18mm、短径14mm、重さ約1.5g 【赤みの強いチョコレート色】 |
卵の数 | 4~6個 |
孵化までの日数 | 13~16日 |
巣立つまでの日数 | 12~14日 |
ウグイスはつがいのつながりがない鳥
ウグイスのオスは縄張りと天敵を監視し、子育てには一切かかわりません。営巣から子育て全てメスが行います。そのため巣の空き時間が長く、ホトトギスなどに托卵されることもしばしばです。
そんなデメリットを抱えながらもメスは種に多様性を求めます。繁殖期の間は複数のオスの縄張りを渡り歩き、気に入ったオスと関係を持っては繁殖を繰り返すのです。オスの方も縄張りを訪れたメスにひたすら求婚を繰り返します。
繁殖期間中のウグイスのオスは多いと1日1,000回さえずることも。メスと関係を持つために縄張りを守ろうと必死です。繁殖期が終わるまでオスはひたすら頑張るため、長い所では10月上旬までさえずりを聞けます。
日本に住むウグイスの仲間
ウグイス
北海道から九州まで、日本全国に広く分布する一般種です。
ハシナガウグイス
普通のウグイスより小型でくちばしが長いです。さえずる回数は少なめで、縄張りも狭い特徴があります。さらに卵の数も2~3個と少なくオスも子育てをするなど、一般種と異なる点が多いです。
ダイトウウグイス
沖縄県南大東島で1922年(大正11年)に発見されたウグイスです。その後1984年の目撃を最後に、絶滅したと考えられていました。
しかし2001年以降に沖縄本島と鹿児島県喜界島で再確認された、南西諸島固有亜種のウグイスです。
発見地の地図はこちら。
リュウキュウウグイス
琉球諸島に冬鳥として渡ってくるとされているウグイスです。しかし声は1年中聞こえるという話もあり、『日本鳥類目録 改訂第7版』において「分布は要検討」となっています。
ウグイスとよく間違えられる鳥
メジロ
その名前のとおり、白い羽毛が目を囲んでいる鳥です。大きさもウグイスとほとんど同じで、スズメ目に属しています。
「梅に鶯」の言葉のイメージからかよく間違えられ、今ではウグイス色というとメジロ色です。ちなみに「梅に鶯」の正しい意味は、『コトバンク』によると、
とりあわせのよいもの。美しく調和するもののたとえ。また、仲のよい間柄のたとえ。
となっています。別に「梅にウグイスがよくとまっている」ということではない点に注意が必要です。
※メジロについてはこちら
ウグイスと人間の関わり
ウグイスは数多くの異名を持つ
ウグイスの異名としてよく知られたものだけでも「春告鳥(はるつげどり)」「歌詠鳥(うたよみどり)」「経読鳥(きょうよみどり)」「初音(はつね)」などがあります。
待ちこがれた春を告げるような美声からついた「春告鳥」のほか、聞きなしがもととなった名前も。
人の言葉に鳴き声を当てはめる聞きなしには、「法法華経」「宝法華経」があります。「経読鳥」はここからです。
「法法華経」の聞きなしは近代に入ってからなので、比較的新しい別称になります。
鳴き声が「ウグイス」という名前の由来に
平安時代前期には、すでにウグイスの名前が使われていました。『古今和歌集』で三十六歌仙の1人に数えられる藤原敏行が、「うぐいす鳴く」とうたった和歌を確認できます。
ではなぜ「ウグイス」なのか。実は昔の人にさえずり声が「ウー、グイス」「ウー、グイ」と聞こえていたためです。正式名称まで聞きなしがもとというのも、ウグイスらしい説といえます。
ウグイスは生物季節観測に使われていた
2020年(令和2年)11月に気象庁が生物季節観測基準を変更するまで、さえずり声が初めて聞こえた日を『ウグイスの初鳴日』と呼んで観測していました。
現在ではアジサイなど植物のみになりましたが、それだけウグイスが愛されていたことを裏付ける事実です。
ウグイスはかつてペットとしても人気だった
ウグイスはその美声から、室町幕府8代将軍足利義政の治世下で、もう飼育が流行していました。
その人気は江戸時代でも衰えず、3代将軍徳川家光の頃にウグイス飼育を専門とする役職があったのです。飼っているウグイスのさえずり声で優劣を競う、「鶯合せ」「鳴き合せ」「鶯会」がことあるごとに行われました。
飼うからにはその方法も発展を見せます。捕まえてきたヒナを立派に成鳥まで育て上げ、さらに鳴き方も学ばせる。江戸時代にはすでに世界屈指の飼育技術が確立されました。
明治政府が起こるまで、江戸・京都・大坂の三都において「鶯品定めの会」と称する品評会を開くなど、人気は上がりこそすれ下がりませんでした。
ウグイスは現在は飼育禁止
ウグイスは現在、『鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)』で捕獲および飼育が禁止されています。それでもウグイスの愛好家は多く、密猟が絶えません。
現在でも「鳴き合せ」が秘密裏に行われ、ときとしてニュースで放送されています。
ウグイスの保護にも許可が必要
けがや失神など普段と違う状態のウグイスを発見した場合、まずは安全な場所に移動してください。二次災害を防ぐためです。しばらく様子を見て問題ないようなら、そのまま離します。
もし保護が必要そうな場合は、自治体の「鳥獣保護課」や「環境保全課」に連絡を入れましょう。どうしたらよいか指示を仰ぐのが正しい判断です。
間違ってもそのまま連れ帰ってはいけません。鳥獣保護法に定められた規定により、最悪1年以下の懲役刑となります。
自治体の連絡先を控えておくと安心です。
ウグイスのフンは貴重品
リゾチームなどの加水分解酵素を多く含むことから、美顔洗顔料やニキビに有効な薬として珍重されてきました。角質層を柔らかくして小じわや肌のくすみなどを除去し、肌がよくなると今でも人気です。
しかし1羽のウグイスからは少量のフンしか取れません。現在ウグイスのフンとして売られているものは、ほとんどがソウシチョウという鳥から取ったフンです。ソウシチョウは特定外来種(生態系・農業・人身の安全などに害を及ぼす可能性のある生物)のため、許可がなければ飼うことはできません。ウグイスがだめならと飼うと、こちらも罰せられるので注意してください。
ちなみにソウシチョウはこちら。
ウグイスは多くの自治体の鳥
昔から愛されているウグイスらしく、山梨県と福岡県では県の鳥です。そのほかの自治体でもウグイスを指定しているところは少なくありません。
北海道から九州まで、ほぼすべての県で指定を受けています。どこもウグイスがかかわっていない県は、富山県、島根県、山口県、香川県くらいです。
いかにウグイスが日本で愛されているかを証明しています。
ウグイスは地域によっては保護対象の鳥
『日本のレッドデータ検索システム』によると、ウグイスは東京都で準絶滅危惧種です。また埼玉県で地帯別危惧種に指定されています。
あのさえずりが消えないよう、環境を整えることが大切です。
春だけじゃないんだよ
ウグイスは春のイメージが強い鳥です。
しかしかつて働いていた山の谷あいにあった職場では、夏にもよくさえずりを聞くことができました。むしろ声が聞こえなくなると秋を感じる鳥だったかもしれません。
自宅周辺では声を聞けなくなってしまいましたが、また遊びにきて欲しいものです。