クリスマスローズ【季節の草花】

2022年10月24日

山間にある行きつけのお店。入り口脇の花壇にはクリスマスローズが植えられています。木製の階段の隙間からも顔をのぞかせているため、気をつけないと時々踏みそうにもなる素朴さです。お店にあるのは質素な印象の緑に茶の挿し色の品種。お店にあるものだけじゃない品種豊かなクリスマスローズについて気まぐれに調べてみました。

クリスマスローズってどんな植物?

クリスマスローズの基本情報

園芸分類草花
形態多年草
原産地ヨーロッパ・西アジア・中国
学名Helleborus
10~50cm
開花期1~4月
花色白・ピンク・黄・緑・紫・黒・複色など
耐寒性強い
耐暑性やや弱い

クリスマスローズの特徴

クリスマスローズと名前にローズが付きますが、キンポウゲ科クリスマスローズ属(ヘレボルス属)の植物です。本来クリスマスローズの名前で呼ばれる品種は、名前の通りにクリスマスのころに開花する「ヘレボルス・ニゲル」を指します

クリスマスローズは品種が多いのも特徴です。低く茂らせた葉の中から長い茎を伸ばす有茎種のほか、茎の低い無茎種があります。また花の咲き方でも大きく3種に分類され、シングル(一重)・ダブル(二重以上)・セミダブル(半八重咲)と個性的。

しかしクリスマスローズ最大の特徴は「種で増やして売られているものには園芸品種名がない」ことです。クリスマスローズは種から出る芽に安定性がなく、必ずしも親と同じ花が咲くとは限らないため。お店で売っている花から好みのものを選んで育て、さらに自分で交配してみる。ほかの花とは違う楽しみ方ができるのもクリスマスローズならではです。

有茎種(葉の上に花が咲く)

無茎種(花と葉が別々に出る)

シングル

ダブル

セミダブル

クリスマスローズには毒がある

本来のクリスマスローズである「ヘレボルス・ニゲル」。実は意味がかなり怖く、「ヘレボルス」は「死の食べ物」、「ニゲル」は「黒」を意味します。ヘレボルス・ニゲルの根は黒く、毒を含んでいることが由来です。

紀元前のギリシャでのこと。神であるアポロンに不敬を働いた都市と、アポロンを祀る国々の間で第一次神聖戦争が起こりました。アポロンを祀る国の軍は神の敵とされた都市の水源である川にヘレボルスを投入したのです。毒のことを知らずに川の水を飲んだ都市の住民はほとんどが重度の下痢を発症。抵抗できないままに都市は陥落しました。

お店で売られているクリスマスローズにもこの毒は含まれています。株によって成分は異なるとされますが、かつては薄めたものを強心剤や下剤、堕胎薬などとして使いました。摂取量によっては心拍数の低下や心停止なども引き起こす危険な毒のため、取り扱いには十分な注意が必要です。切ったときにしみ出す液にも毒は含まれているため、肌に触れると炎症を引き起こすことも。クリスマスローズに触れるときには手袋をしておくと安心です。

クリスマスローズは切り花でも楽しめる

クリスマスローズは切り花でも楽しめます。たくさん咲いてきたら好みの花を切り取り、「湯上げ」という水揚げ方法を使うと長持ちするので覚えておきましょう。湯上げの方法は以下の通りです。必ず手袋をしてから取り扱うようにしてください。

  1. クリスマスローズの花の下までついている葉をすべて取り除く
  2. 葉を取り除いた花を花瓶やバケツなどに入れて、40℃前後のお湯を花の下までたっぷり注ぐ
  3. お湯が冷めるまでそのまま放置する
  4. お湯が冷めたら花瓶に移し、水を花の下までたっぷり入れて生ける

クリスマスローズの花言葉は?

別名「冬の貴婦人」とも呼ばれるクリスマスローズですが、その花言葉はむしろ暗いものが多いです。「いたわり」「追憶」「慰め」「私の不安を和らげて」「私を忘れないで」「中傷」など多くの花言葉があります。

「私の不安を和らげて」「慰め」は、古代ヨーロッパにおいて香りに人の心を癒す効果があると考えられていたことに由来したものです。

時代は下って中世ヨーロッパでのこと。騎士たちが戦場に向かうときに恋人へ送ったことから、「私を忘れないで」という花言葉がつきました。

「中傷」は根の毒にちなむとされます。

クリスマスローズは日本ではゲン担ぎに使われることも

日本だけのクリスマスローズの花言葉には「合格」というものがあります。なぜこのような花言葉がついたかというと、クリスマスローズの花に見えるところが実はガクであることが由来です。

クリスマスローズのガクは散って落ちることはありません。さらに5枚あります。「5枚のガク」から転じて「合格」。さらに「ガクが落ちない」ことから「学が落ちない」、と実に日本らしいゲン担ぎです。

受験生へのプレゼントにはピッタリといえます。

クリスマスローズの育て方

日当たり

クリスマスローズは明るい半日陰を好みます。10月ごろ~4月ごろにかけては日当たりのよい場所が最適です。真夏の直射日光には弱いので、5~9月までは木陰などの半日陰に移します。

水はけがよく適度に水もちする用土がおすすめです。弱酸性~中性になるよう調節します。

鉢植えにする場合は、赤玉土小粒4、軽石小粒3、腐葉土3の配合土や市販の専門用土などがおすすめです。地植えにする場合は、植え付ける1週間ほど前に土づくりをします。1平方メートルおよび深さ30cmの庭土に、腐葉土あるいは牛糞堆肥を3kgと緩効性肥料を規定量すき込んでおきましょう。

の種類

苗にはすでに花が咲いている「開花株」、開花期になると花を咲かせる予定の「開花見込み株」、1年以上育てないと開花しない「ポット苗」大きく分けて3種類があります。好みの花の苗を買いたいのであればすでに花を咲かせている株か、生長点を切り出して培養したメリクロン株を購入することが大切です。通常売られているものは種から育てた実生苗(みしょうなえ)のため、花が咲いていないとどんな花なのかわかりませんポット苗を買うときには念頭に置いて購入しましょう。

苗の選び方

よい苗は葉の数が少なくても芽が太くて充実しているものです。数だけ多くても芽が小さいと花は咲きにくいので注意しましょう。また花や葉に黒いシミや変色、縮れが見られるものは病気の可能性があります。色がきれいな緑色で葉や芽の形のよい株が良株です。

植え付け

花壇など地植えにして楽しみたい場合は、夏は半日陰になる落葉樹の下などを選んで植え付けます。適期は10~3月です。

秋~冬に植え付ける場合は根鉢を完全にほぐして古い用土を落とし、傷んだ根があれば取り除いて植え付けます。土を落とすときには水を張ったバケツに入れて洗い流すと簡単です。

クリスマスローズは上に芽がついているため浅植えにします。芽が隠れないよう注意して植え付ければ完了です。水やりをしたら根が土から出てしまったというときは、再度上から土を被せて根が土から出たままにならないようにしましょう。植え付け適期以外に地植えにする場合は、根鉢を崩さずにポットから抜いたそのままの状態で植え付けます。植え付け方を間違えると株を傷めるので注意してください。

水やり

地植えの場合は何日も雨が降らずに乾燥がひどいとき以外は基本的に必要ありません。

鉢植えの場合は生育期の10~5月までの間、土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷり水やりします。注意点としては、夕方に水やりすると夜に凍結して根が傷む可能性があることです。晴れた日の午前中に水やりをすませましょう。また鉢植えの場合は、6~9月の水やりにも注意が必要です。高温多湿で根腐れを起こさないよう、乾燥気味に育てるようにしてください。

肥料

地植えの場合は10月に緩効性肥料を施します。花が終わった4月にもお礼肥として緩効性肥料を与えてください。鉢植えの場合は水やりでも流れやすいため、より多くの肥料を必要とします。10月、12月、2月に緩効性肥料を施すだけでなく、10~4月まではリン酸の多い液肥を月に2~3回与えるのがおすすめです。4月にはお礼肥も与えます。

肥料を与えるときの注意点

クリスマスローズは窒素不足だと葉全体が黄色くなって根の機能が低下してしまいます。またカリウムやマグネシウムが不足すると、葉の縁や葉脈などが黄色く変色するのです。つまり葉全体をこまめに観察していると肥料不足を見落としにくくなります。ただし窒素分が過多になると葉ばかりが茂って花付きが悪くなることも。株自体も病気がちになるため、むやみと肥料を与えすぎないことも大切です。

植え替え

地植えの場合は増えすぎたり株が密集したりしない限りは基本植え替えは必要ありません。

鉢植えの場合は生育旺盛なため、深めの二回りほど大きな鉢に植え替えます。植え替え適期は10〜11月か花が終わった後の5月です。もし植え替え適期以外で行う場合は根鉢を崩さずに植え付けます。

植え替え方法は植え付け方法と同じです。根鉢を崩して古い土を落とし、バケツに水を張って洗い流します。傷んだ根を取り除いて新しい鉢に浅く植え付けたら、緩効性肥料を与えて完了です。土は弱酸性から中性の培養土を選びます。

庭に植え替えるときも同様です。夏は直射日光の当たらない落葉樹の下に植え付けるとよいでしょう。もし植え替えようとした株が根詰まりを起こしていたら、根を1/5ほど切り落とします。ただし切ってよいのは植え替え適期でも10~11月の生育期限定の話です。異なる時期の植え替え時は、大きい鉢へ根鉢を崩さずにそのまま植え替えてください。

増やし方

種まきで増やす方法

クリスマスローズは5~6月になると実が熟し種を採取することができます。採取した種はすぐにまくことができるので、鉢にまいて乾燥しないよう半日陰で管理するとよいでしょう。すぐにまかないときは乾燥させないように保管して、10月になってからまきます。

種から育てるいわゆる実生株は数年しないと花を咲かせません。しかし自分だけの花づくりができるので挑戦してみる価値はあります。

種を取りたい株の花が開き切る前に、ピンセットで雄しべと蜜腺を取り除いてください。交配させたい株の花が完全に開き、花粉ができていることを確認してから雄しべを取ります。後は種株の雌しべに受粉させて種を取るとよいでしょう。

ただしどんな花が咲くかは開花までわかりません。時間をかけて楽しめる人におすすめです。

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株分けで増やす方法

大きくなった株は株分けすることができます。株分けの適期は10〜12月の生育期です。あまり小さく切り分けてしまうと株が弱ってしまうため、3芽以上はつくように切り分けてください。後はそれぞれ植え付ければ完了です。好みの花だけでいっぱいにするのもよいでしょう。

剪定

毎年たくさんの花を咲かせるために剪定は欠かせない作業です。特に種を取るつもりがないのであれば、終わった花が見苦しくなりはじめたらすぐに取り除きます。種を作らせすぎると株が弱って花数も減ってしまうため花柄は株元から切り取りましょう。

同様に11~12月ごろ、新しい葉が出てきたら古い葉をつけ根から切り取ります。枯れた葉や傷んだ葉は常に取り除き、健康で若い葉を残すようにしてください。剪定で使うはさみは切り始める前に第3リン酸ナトリウムなどのウイルス除去剤で消毒します。クリスマスローズは細菌やウイルスによる病気に弱いため予防のためにも必須のひと手間です。

病害虫

灰色かび病べと病、ブラックデスなどが代表的な病気です。基本的に過湿や蒸れが原因で発症しますがブラックデスは防除できません。さらに治す方法もないため発症したら株ごと処分することになります。

いずれも葉に異常が出るのが特徴なので、葉を注意深く観察することが大切です。葉に斑点が出てきた、黒ずんできたとなったらすぐに対処しましょう。特に黒い斑点が葉脈にそって広がり、葉や花が縮れてきたらブラックデスです。ほかの株に移る前に廃棄してください。

害虫ではナメクジアブラムシ、ハダニなどが代表的です。ナメクジは芽を食害し、アブラムシやハダニは芽や葉の裏に寄生して枯らしてしまうこともあります。特に早めに駆除したい害虫はアブラムシです。ウイルス病を媒介するため早めに薬剤なども使って防除するとよいでしょう。

素朴さや華やかさなど様々な顔を持つ花

クリスマスローズは素朴なものもあれば華やかなものもあり、文字通り様々な顔を持つ植物です。花期も長いのでいくつもの品種を混植すればより華やかさも増します。

ただしくれぐれも毒にはご注意を。ちょっと物は違いますが危険物でしっかり身を守っているあたり、「ローズ」と呼ばれるのは伊達ではないようです。

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Posted by koroton