レンゲ(蓮華)【野の花や草木】
私の地元は冬に麦を植える地域柄、なかなか春にレンゲ畑を見る機会はありません。しかしやはりあのピンクの花は春の風物詩として心にくるものがあります。今回はそんな春を彩るレンゲについて気まぐれに調べてみました。
レンゲってどんな植物?
レンゲの基本情報
園芸分類 | 草花 |
科目 | マメ科ゲンゲ属 |
学名 | Astragalus sinicus |
形態 | 越年草(二年草) |
原産地 | 中国 |
丈 | 10~25cm |
開花期 | 4~6月 |
花色 | ピンク・白(クリーム)・赤 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 弱い |
レンゲの特徴
レンゲは中国原産の帰化植物です。江戸時代初期に当たる17世紀ごろに渡来し、明治時代に入ると急速に広まりました。
レンゲは根に根粒菌と呼ばれるものを持つ性質があります。マメ科の植物によく見られる特徴でレンゲも例外ではありません。この根粒菌には土中の窒素を蓄えて土壌を肥沃にしてくれることから、かつては稲作後の緑肥としても牛の飼料としても利用されてきました。戦後は各地の田んぼがレンゲ畑へと変わり、日本の原風景のひとつとなった理由といえます。それだけ馴染みの深い花だけに岐阜県ではレンゲは県の花です。現代では化成肥料が普及したためレンゲ畑は急速に減ってきました。実は化成肥料は戦前から作られるようになったものの、原料が軍事物資ということで生産がはばかられたという側面があったのです。緑肥としての役目を終えたレンゲは一部が野性化し、水田の周辺や草地などで見られるだけになったという地域も珍しくありません。それでもレンゲのはちみつはクセがなくて食べやすいと人気があり、今でもわざわざレンゲ畑を作ってはちみつを集めている養蜂所もあります。
レンゲは食用になる
レンゲは花が開く前のわかめや若葉は軽く茹でておひたしにしたり、和え物や煮びたし、炒め物にしたりとさまざまな調理法があります。蕾や花は若芽と一緒に天ぷらにしても楽しめるため、単なる緑肥以外の実用性からも重宝されました。
他にも花からガクを取り除いてからジャムやシロップ漬け、花酒にしてその色を楽しむのもおすすめです。味はよいと評価されているので、興味のある方は栽培してみるとよいでしょう。
レンゲは薬や飼料としても活用されてきた
レンゲは民間薬としても重宝されてきました。開花期に地上部を刈り取り日干しにして乾燥したものをよく煎じ、少量ずつ飲むことで利尿や解熱に効果があるとされます。生の葉の絞り汁は軽度のやけど用の外用薬として活用されてきました。乳牛用の飼料や休耕田の雑草対策にも重宝されてきた歴史があります。除草剤のない時代には有用な植物として活用されてきました。
レンゲの語源は?
実はレンゲの正式和名は「ゲンゲ」です。レンゲの方が別名というのは意外といえます。レンゲはもともと中国から渡来した植物でした。そのため漢名の「翹揺」の音読みからゲンゲという和名がついたというわけです。この他にも花が群がって咲く様子が紫色の雲が低くたなびくように見えることから「紫雲英(ゲンゲ)」という和名になったという説もあります。しかし「紫雲英」の表記は比較的新しいとされることから、語源としては弱いといえるでしょう。いずれにせよ花の様子からついた名前ということは間違いないようです。ではレンゲはどこから来たのでしょうか。レンゲは花の様子が仏様の座する「蓮華(本来は蓮の花)」に似ていたことに由来します。中華料理で使う「レンゲ」も蓮の花の花びらに似ていることが由来というのですから、仏教は東アジアの文化において強い影響力があったといえるでしょう。
レンゲの別名は?
レンゲは別名の多い花です。そもそもレンゲ自体が別名なのですから当然のことといえるでしょう。レンゲは他にも「テンマリソウ」「ゲゲバナ」「ミコシソウ」「ノエンドウ」「ホウゾウバナ」のほか、漢字をそのまま読んで「シウンエイ」とも呼ばれます。
レンゲを漢字で書くと?
レンゲを漢字で書くと語源そのままに「蓮華」となります。レンゲはレンゲソウとも呼ばれることがありますが、こちらも漢字で書くと「蓮華草」です。蓮や宗教用語と区別するときにはカタカナ表記がよいでしょう。
蓮華と蓮花の違い
蓮華も蓮花も元々「蓮の花」を意味する言葉で表記の違いでしかありません。使い方も意味するものも一緒であるものの、蓮華の方が優勢という程度というところが正しいようです。
蓮華と蓮華草の違い
蓮華は本来蓮の花を意味します。宗教用語となると仏様の座す台座の花です。レンゲの方が当て字といってもよいため、使いどころによっては誤解を招くこともあるかもしれません。蓮華草の場合はレンゲソウを漢字で書いたものとなるため、レンゲそのものを指す言葉としての要素が強くなります。
レンゲの外国名
レンゲはあくまで日本でついた日本名のため、原産地である中国では伝わりません。中国ではレンゲは「紫云英(ピンイン)」といいます。
では英語名はなんというのでしょうか。英語でレンゲは「Chinese milk vetch」です。中国原産で、レンゲを食べた羊はよく乳を出すということから「milk」が使われています。また最後の「vetch」は植物の総称を意味する言葉です。
この他では学名の「Astragalus sinicus」も使われることがありますが、「Astragalus」がギリシャ語の古語「strogalus」で「くるぶしの骨」を意味し、「sinicus」がラテン語で中国を意味します。なお「Astragalus」の日本語訳はゲンゲ属となり、中国のゲンゲ属でレンゲです。
レンゲの花言葉は?
レンゲの花言葉には「あなたがいれば私の苦痛は和らぐ」「私の苦痛を和らげる」「心が和らぐ」「私の幸福」「感化」などがあります。
レンゲ全般の花言葉はこの中の「あなたがいれば私の苦痛は和らぐ」「心が和らぐ」です。花言葉の由来は根が生薬としての効能を持ち、痛みを和らげるのに使用されたことがあげられます。宗教的な理由もあり、俗世の苦痛から解放してくれるような花という意味合いもあるようです。
ギリシャ神話に登場するレンゲ
ギリシャ神話にはレンゲが登場します。内容は悲しい変身譚です。
ある姉妹が神殿の祭壇に供える花を摘みに野原に出かけました。姉が水辺に咲いているレンゲを見つけその花を摘むと、折った茎から血が流れ落ちたのです。実はそのレンゲは嫌な男から逃げ隠れていたニンフが姿を変えていたものでした。姉は神罰を受けてその身が草に変わっていってしまいます。「花はみな女神が姿を変えたもの。もう花は摘まないで。」そう妹に言い残して姉はレンゲへと変わってしまいました。
実際レンゲは茎を通してバクテリアに酸素を送っています。そのために人の血液のようにヘモグロビンに似た物質が循環しているのです。レンゲの茎を折ると赤みがかった汁が流れることから生まれた神話といえます。
レンゲの育て方
日当たり
レンゲは日当たりのよい場所を好みます。鉢植えにした場合も日当たりのよい場所に起きましょう。
土
レンゲはもともとやせ地の改善に使われていた草です。そのため土壌はあまり選びません。鉢植えの場合は市販の園芸用土で大丈夫です。
植え付け
レンゲは種を買ってまくことから始めます。発芽適温は15~30℃ですので、夏の終わりから秋にかけて種をまくようにしましょう。遅くなってしまったときには加温してください。
水やり
表面が乾いたらたっぷりと水やりをします。ただし寒い季節には午前中に行いましょう。夜になってから水やりをすると、土中の水分が凍って根を傷めてしまいます。
肥料
特に必要ありません。
増やし方
種まきのみです。
連作障害
通常レンゲだけをまき続けることはありませんが連作障害があります。間に別の植物を育てるなどして障害が出ないようにしてください。もしレンゲだけを育てるのであれば、鉢植えの場合は土を変える、地植えの場合は2年は間を置くといった対策が必要です。
病害虫
アブラムシがつきやすいです。またコナジラミがつくこともあります。食用も考えている場合は農薬の量に注意してください。
桜とはまた違った春を告げる花
もう何年レンゲ畑を見ていないでしょうか。桜とはまた違う一面のピンクを演出するレンゲ。麦畑の一面の緑よりもレンゲのピンクの方が春らしい。庭にピンクのカーペットを演出してみるのも一興かもしれません。