南天(なんてん)【庭の草木や花々】
鳥が運んできた種から生えた木に南天があります。お正月の飾りにも使われる縁起物で、非常に生命力が強い木です。冬には真っ赤な実をつけ、鳥たちの貴重な食料にもなっています。そんな南天について気まぐれに調べてみました。
南天ってどんな植物?
南天の基本情報
園芸分類 | 庭木・花木 |
形態 | 常緑低木 |
原産地 | 中国(日本を含む場合もある) |
樹高 | 1~5m【環境・品種でばらつきあり】 |
開花期 | 6~7月 |
花色 | 白 |
鑑賞期 | 花6~7月・実11~2月 |
実色 | 赤・白・黄 |
耐寒性 | 普通~強い |
耐暑性 | 普通~強い |
南天の特徴
南天は中国と日本が原産といわれています。
中国のみを原産地とする場合、日本にも南天が自生するのはなぜか。それは中国中南部の暖かい地方から持ち込まれた栽培種が、野生化して広がったためです。
実際、西日本各地で南天は自生しています。その中でも山口県萩市川上の「川上のユズおよびナンテン自生地」は名所です。1941年に国の天然記念物に指定されています。
南天の名前の由来
中国で「南天燭(ナンテンチュー)」と名付けられたことから、日本でも音読みして南天と呼びます。冬につける赤い実が、まるで灯火(ともしび)を連想させることが由来です。
また葉が竹に似ていることから「南天竹」とも名付けられ、中国の正式名称となっています。
これらの名前を音読みしたものが和名になっているのです。
南天の花言葉
南天の花言葉は「私の愛は増すばかり」という情熱的なものです。
梅雨時に白い花を咲かせる南天は、そのあとに実をつけます。冬には真っ赤に変わることから、時の移り変わりとともに愛情が増していくかのように見えるのです。
ただし多くの花で色によって花言葉が変わるように、南天は実の色で違っています。
- 赤い実の花言葉・・・「わたしの愛は増すばかり」「良い家庭」「幸せ」
- 白い実の花言葉・・・「募る愛」「機知に富む」「深すぎる愛」
どちらの南天も深い愛情を感じさせる花言葉です。特に白南天は強い愛情が感じられる花言葉になっています。
南天が縁起物とされる理由
名前の音が「難を転ずる」に通じ、昔から縁起物として珍重されてきました。
また魔除けだけでなく火災除けにも効果があると考えられたのです。そのため江戸時代に入ると、玄関先に植えられることも多くなりました。
特に災厄が訪れるとされる鬼門(北東)の方角に植えるよう推奨されてきた木です。
また老人が転んだ時の安全策としても植えられました。いざというとき寄り掛かれるようにと、トイレ付近にもよく植えられたのです。
南天の代表的な園芸品種
錦糸南天(キンシナンテン)
葉が糸のように細くて樹高も低く、生長が遅い品種です。多くの園芸品種の親に当たる品種でもあります。
白南天(シロナンテン:別名シロミナンテン)
実は熟すと赤ではなく、やや黄色味を帯びた白色になります。他の南天と異なり、秋になっても紅葉しません。
お多福南天
(オタフクナンテン:別名ゴシキナンテン・オカメナンテン)
樹高が20~50cmと低く、グラウンドカバーにも使われる品種です。紅葉の時期には、黄色から赤へと徐々に変化する様がとても美しい品種でもあります。
幅広く丸みのある葉で、株が充実しないと実をつけません。めったに枯れることのない丈夫な品種です。
この他にも南天は縁起物として、様々な園芸品種が作られてきました。現在では30種類を超える品種があるといいます。
南天の育て方
日当たり
午前中のみ日が当たり西日は避けられる半日陰を好みます。耐陰性もありますが、日当たりが悪すぎると実付きは悪くなるため要注意です。
土
通気性と水はけがよく、適度に湿度を保てる肥沃な土ならいうことありません。やや粘土質な土を好む傾向があります。
鉢植えにする場合は小粒の赤玉土4に腐葉土と黒土を3ずつか、小粒の赤玉土7に腐葉土3で配合した土がおすすめです。
手間を省きたいときには市販の培養土でも問題ありません。
植え付け
地植え、鉢植えとも植え付け適期は3~4月、あるいは9~10月です。
地植えの場合は植え付ける2週間前から準備します。土に腐葉土や牛糞などの有機物を混ぜ込んで、根付きがよくなるようにしておきましょう。
鉢植えの場合は株より1回り大きい鉢に植え付けます。鉢底から鉢底石、土、苗の順で植え付けてください。
水やり
地植えの場合は基本的に必要ありません。乾燥した日が続いたときだけ、様子を見て与えれば十分です。
鉢植えの場合は水切れに注意しましょう。乾燥しすぎないように表面が乾いたらたっぷりと与えます。夏場は特に注意が必要です。
肥料
基本的に必要ありません。
地植えは気になるようなら冬に鶏糞や緩効性の化成肥料を混ぜて与えます。
鉢植えは植え替え時に、カリやリン酸が多めに含まれる肥料を混ぜ込んでおきましょう。
植え替え
地植えで植え替えたいときは、2週間前から植え替え先の土づくりをしておきます。株の根元から30cm離れた場所にスコップを入れて、根回りに付いた土ごと移植してください。
大きな株を移植する時は、半年前に株周りの根をスコップで切っておきます。移植する時は葉を半分ほど取り除いてから植え付けましょう。鉢植えの場合は2~3年で植え替えます。根詰まりしやすいため、定期的に1回り大きい鉢へ植え替えてください。
剪定
時期は2~3月が適期です。実を付けた枝は翌年に実を付けないため、根元から切り取ります。枯れ枝や細くて弱い枝も切り落としましょう。
剪定することで風通しがよくなり、病害虫の発生を抑制できます。
増やし方
種まきと挿し木、株分けで増やせます。
種まきで増やす場合
実を収穫したらすぐに中から取り出してまきます。注意点は種を乾かすと発芽率が下がることです。
種は取っておいて3~4月にまくこともできます。そのときは湿らせたキッチンペーパーなどで種を包み、密封袋にしまって冷蔵庫で保管してください。
ポットなどに土を入れた上から種をばらまき水をかけ、ビニールなどで覆って乾燥を防ぎます。15~25℃が発芽の適温です。
発芽すると双葉の後に本葉が出ます。本場が2~3枚になるまで乾燥に注意して育て、後は植え替え育苗するだけです。
花が咲くまで4~5年かかります。
挿し木で増やす場合
3月中旬~下旬か9月下旬ごろに若く勢いのある枝を採取して行います。
挿し穂は2~3時間水揚げさせてから、小粒の赤玉土など清潔で肥料分を含まない用土に挿してください。このとき切り口に発根剤を塗っておくのがおすすめです。
後は発根するまで土を乾かさないように管理します。根付くまで2~3か月かかるため、気長に待つことが大切です。
株分けで増やす場合
勢いのよい株の場合、伸ばした根から新しく芽が出てどんどん増えていきます。
そのような株なら株分けすることも可能です。勢いのよい芽を選んで植え付けてください。
病害虫
基本的に病害虫の心配はほとんどありません。ただし初夏から秋にかけてカイガラムシに注意します。
カイガラムシは枝や葉の付け根に寄生して、南天の樹液を吸って弱らせる困った害虫です。綿のような白いものが木についていたら、ブラシなどでこすって全て落としましょう。放置しておくとすす病の原因になります。
すす病はカイガラムシの排泄物にすす病菌が集まることで発症する病気です。すす病にかかると葉の表面が黒くすすに覆われたようになります。そのため南天は光合成が出来なくなり、悪化すると枯れる原因にもなる病気です。
黒くなっていたらその部分を切り取り処分します。後は殺虫剤をまいてカイガラムシを予防しましょう。
実付きをよくするには?
実付きが悪くなる理由
- 日当たりが悪すぎる
- 花が咲いている時に雨が降る
- 剪定時期を誤った
- 窒素肥料のやり過ぎ
原因ごとの対策
日当たり
日陰に強いとはいえ、午前中くらい日の当たる場所へ移動しましょう。地植えの場合は植え替えてください。
花期の雨
鉢植えならば軒下など雨が当たらない場所へ移動します。地植えの場合は花穂をビニール袋で覆うなどして雨除けしましょう。
南天の花の時期は6~7月で、ちょうど梅雨の時期と重なります。雨が当たることで花粉が流されて授粉しにくくなってしまうため、雨除け対策は欠かせません。
剪定時期
いくら花が受粉しても剪定してしまえば実は付きません。そのため剪定は、実を楽しんだ後の2~3月に行うようにします。
また一度実を付けた南天の枝は、3年間実を付けない場合も珍しくありません。剪定を兼ねて収穫してしまうのもおすすめです。
肥料の見直し
生育がよすぎると逆に実つきは悪くなります。枝葉の伸びもよく、花は咲いているのに実が付かない。そんな場合には窒素肥料を控えてみてください。
より実付きをよくするなら?
株のすぐ近くに品種の異なる南天を植えるのもおすすめの方法です。それだけで実付きが格段によくなります。
またチョウやミツバチといった虫は、南天の受粉を助けてくれる貴重な存在です。姿がない場合には殺虫剤の使用を控えましょう。
南天の薬効と毒性
南天の実の薬効
実にはアルカロイドの一種であるナンテニン(o-メチルドメスチシン)という成分が多く含まれます。このナンテニンには咳止め効果があるため、古来より「南天実」と呼ばれる生薬として知られている成分です。
ナンテニンには以下の効果があります。
- 気管平滑筋に作用して気道を拡張し咳を鎮める
- 咳中枢に作用してその興奮を抑え咳を鎮める
- 気道に炎症を起こしている菌を殺菌して改善する
- のどの痛みを和らげる鎮痛作用がある
ただし適切に使いこなすためには専門知識が必要です。アルカロイドの過剰摂取は毒になるため、素人判断で使うのはやめましょう。
南天の葉の薬効
南天の葉にはアルカロイドの一種であるナンジニンという成分が含まれています。このナンジニンという成分は有毒成分です。熱と水分に触れることで微量のチアン水素と呼ばれる成分を発生させます。
このチアン水素も猛毒です。しかし南天に含まれる量はごく微量のため、殺菌・防腐効果をもたらします。
お赤飯などによく添えられている理由は、彩りだけでなく実益も兼ねているのです。
南天の毒性
アルカロイドは適量なら薬効成分ですが、過剰摂取すると毒物になる成分です。
南天の実には、アルカロイドのナンテニンやドメスチンといった成分が含まれています。ナンテニンも適量であれば薬効成分です。しかし過剰摂取すると知覚や運動神経の麻痺などが起こる可能性があります。
また葉に含まれるアルカロイドのナンジニンも同様です。過剰摂取により大脳や呼吸中枢の興奮を引き起こし、さらに麻痺などの原因となる可能性があります。このため南天の実や葉を、薬学知識が無いままむやみと口にしてはいけません。
南天という木
我が家の南天は、鳥がいつの間にか鬼門の方角にまいてくれたものです。「南天が自然に鬼門に定着するのは縁起がよい」ということで、そのまま今も植わっています。
南天にとってその場所の何が気に入ったのかはわかりません。しかし根元から何本も芽を出し、さらに這わせた根から子株を出すなど、今ではかなりの大株に育ちました。
南天さん、これからも厄払いをよろしくお願いします。