タヌキ【身近にいる動物たち】
夜の信号除けの抜け道。車がギリギリ交互通行できる程度の裏道の端を、慣れた様子でトコトコと歩く丸みを帯びた影。野生のタヌキです。誰が飼っているものでもありません。そんなどこかのんきで危なっかしいタヌキについて、気まぐれに調べてみました。
タヌキってどんな動物?
タヌキの特徴
科目 | 食肉目イヌ科タヌキ属 |
体長 | 50~70cm【個体・季節で大きく変わる】 |
しっぽの長さ | 12~25cm【個体・季節で大きく変わる】 |
体重 | 夏場:4~6kg 秋~冬:6~10kg |
体色 | 雌雄同色 ・体は灰褐色か茶褐色 ・目の周りに黒い模様 ・耳の縁や足先も黒い ・全身に白い差し色が入る ・白ダヌキや黒ダヌキの報告もあり【個体差が大きい】 |
タヌキというと精巣が「狸の金玉八畳敷き」などといわれ、とても大きいイメージがあるのではないでしょうか。実際にはそんなことはなく、そんなに大きくもありません。
タヌキの名前の由来
タヌキと呼ばれるようになった由来には諸説あります。主なものは以下の4つです。
- タヌキの皮を「手貫き(たぬき:手や腕を覆って保護する籠手)に使ったから
- 「田の怪(け)」の意から
- 死んだように見せて人を「出し抜く」ことから
- 人の魂を抜き取る「魂抜(たまぬ)き」の意から
タヌキには地方名も数多くある
ムジナはよく聞くという人も多いのではないでしょうか。本来ムジナはアナグマのことです。しかし見た目が似ていることや、アナグマの巣穴をタヌキが利用することもあり、古くから混同されてきました。
そのほかにもクサイやコケ、アナッポ、アナホリ、カイネホリ、ダンザ、トンチボー、ハチムジナ、バンブク、ボーズ、マメダ、ヨモノなどといった地方名があります。
タヌキは歩き方が独特
タヌキは歩き方も特徴的です。前足は5本ある指のうちの4本だけを接地します。後ろ足は4本指のため、足跡は前後とも4本指です。さらに指先だけを使って歩きます(指行性)。
足の指の間には水かきがあり、水辺を歩くのに適した形になっているのも特徴です。
同じタヌキでも見た目が大きく変わる
タヌキは個体や季節で体格が大きく変わる動物です。体長もしっぽの長さも目立つくらいに違います。
夏場は一般的にイメージされるタヌキより、見た目はかなりスリムです。秋になると冬に向けて太ること、夏毛から冬毛に変わることから、見た目もしっぽも丸みを帯びたいわゆるタヌキの見た目になります。
実際に見比べてみると。こちらがもっふもふの冬毛のタヌキ。
こちらがスレンダーな夏のタヌキです。
どちらも同じ動物ですが、これだけ見た目が変わります。
子ダヌキは子犬と間違われやすい
子ダヌキは顔つきが犬に似ていて毛も短いことから、犬の子供と間違われやすいです。実際勘違いから拾われて、飼っていたらタヌキになってびっくり!ということもあります。犬とタヌキの目立った違いは耳の形と大きさです。タヌキは耳が丸くて小さめで、よく見てみると異なることがわかります。子犬のような動物を見つけたら耳をよく見てください。
タヌキは体型が原始的
タヌキはイヌ科の原始的な体型をよく残しているといわれています。
食肉目の先祖は木の上で生活していた動物でした。やがて食料となる獲物が取りやすい、森林から草原へと移動していきます。
しかしタヌキはイヌ科の中では獲物を長く追えるような体型はしていません。胴長でほかのイヌ科の動物と比べると短足な体型をしています。そのため原始的なイヌ科の特徴がよく残った動物です。
タヌキの生態
概要
タヌキの生態をまとめると以下になります。
分布 | ・中国東部 ・中国南部(雲南省) ・ベトナム北部 ・韓国 ・ロシア東部(ウスリー地方) ・日本 |
生息域 | 山地から郊外の住宅地まで広く生息 【主に樹林やその林縁部・川などの水辺が散在する場所を好む】 |
行動域 | ・0.26~20平方キロメートル ・秋には行動範囲が広くなり、冬は狭くなる傾向がある 【地域差・季節差が大きい】 |
活動時間 | 夜行性【人間の影響がないと昼間も行動する】 |
冬眠の有無 | ・寒冷地の個体群は冬眠する ・暖地の個体群は通年活動する |
食性 | 雑食 【ネズミ・鳥類やその卵・両生類・魚・昆虫・動物の死骸・植物の葉や芽、果物、種子など】 |
性格 | ・臆病 ・警戒心が強い ・音に敏感 ・自己防衛本能が強く攻撃的 |
天敵 | 大型猛禽類(イヌワシ・オオワシ・ワシミミズクなど) ・キツネ ・野犬など |
寿命 | ・野性下では4~8年 ・飼育下では10~14年ほど |
タヌキは限られた地域にしかいない動物
2010年3月23日のことです。旭山動物園と久留米市鳥類センターが共同でシンガポール動物園にホンドダヌキのひとつがいを送りました。
タヌキは日本では当たり前の動物です。しかしシンガポールでは「パンダ並みの珍獣」として、冷暖房完備の専用舎が用意され、歓迎式典まで開催されました。
実際にタヌキ欲しさに国外の希少動物を譲渡されることもあるくらい、海外では珍しい動物です。
タヌキは分布域を拡大中
日本でおなじみのタヌキは、ユーラシア大陸でも東側の限られた地域にしか住んでいませんでした。
現在では旧ソ連に毛皮目的で輸入されたビンエツタヌキが逃げ出して野性化しています。ロシア東部からスウェーデンやフランス・イタリアでも目撃され、確実に生息範囲を広げているのが現実です。
日本のタヌキは固有種?
タヌキにはいくつかの種類がありますが、日本産のタヌキは独立種として認められているわけではありません。
しかし大陸にいるほかのタヌキと比較すると、頭の骨が長いことが分かっています。また染色体の数にも違いがあることから、別種として登録すべきと主張されている動物です。
日本にはニホンタヌキとエゾタヌキの2種類が住んでいます。この2種の違いは体つきでも明白です。エゾタヌキはニホンタヌキと比べて毛が長く、雪の上を走りやすいように足も長くなっています。そのため日本の個体群は2亜種であるという主張もあるほどです。
日本以外ではタヌキは4種類
本来の生息域で生活しているタヌキは日本のものを除き4種類です。韓国にコウライタヌキ、中国東部やベトナム北部にタイリクタヌキ(ビンエツタヌキ)、中国雲南省にウンナンタヌキ、ロシア東部のウスリー地方にウスリータヌキがいます。
タヌキは適応力が高い
タヌキは基本的に森林や湿地帯など、自然環境が豊かな場所ならあまり環境を選ぶことなく暮らしています。適応力が高いため、標高2000m級の亜高山帯にも分布しているのが特徴です。
しかし環境破壊などで住処が減った結果、農村部はもちろん、都市部といった人間の生活圏でも生活するようになりました。適応力の高さも相まって、排水口や廃屋などの人工物も活用して住処を確保しています。自然界では巣穴はほかの動物が作ったものや、自然にできた穴を活用するのが特徴です。アナグマと同居することも珍しくないことから、アナグマともよく間違われてきました。「同じ穴の狢(ムジナ)」もここに由来しています。
タヌキは食性も豊か
雑食性で、自然界にあるものならほぼ何でも食べるといっても過言ではありません。
ネズミや小鳥などの小動物から、カエルなどの両生類、昆虫類や魚、カニなどの甲殻類、動物の死骸など、動物性のものだけでもさまざまです。
もちろん植物性のものも好んで食べます。植物の葉や芽、果物や種子、臭いが強い銀杏(ぎんなん)も大好物です。木登りもそれなりにできることから、カキなどの果物を木に直接登って食べることもできます。このように何でも食べられることから、住んでいる場所にあった食事をしているのが特徴です。都市部では人が残した残飯を主食にしている場合もあります。
タヌキの餌付けは厳禁
「タヌキをよく観察したいから」「タヌキがかわいいから」と、庭にエサを置いてタヌキを餌付けする人がたまにいます。しかしこれはタヌキのためになりません。
一度餌付けされて人にエサをもらうことに慣れてしまうと大変です。タヌキは自分でエサをとれなくなってしまいます。
もし何らかの理由でエサをもらえなくなったとしましょう。そうなった場合エサをとれないタヌキの運命は決まってしまいます。餓死するしかないのです。
タヌキのことを思うなら餌付けは絶対にしないでください。
タヌキの独特な習性「ため糞(フン)」
タヌキの有名な習性に「ため糞(フン)」があります。1頭につき行動範囲内に約10か所、複数の個体が使うトイレのようなものがあるのです。
毎日2、3か所のため糞場でフンをし、臭いでどんなタヌキがいるか、どんなエサがあるかなどの情報交換をしているものと考えられます。
そうはいっても複数頭のタヌキが毎日フンをするわけですからその臭いは結構強烈です。しかも縄張りが重なっているタヌキ全頭が利用します。
そのため大きなため糞場は、幅50cm、高さ20cmになっていることもあるというのですから驚きです。
タヌキの日中の行動
タヌキは基本的に夜行性です。目もあまりよくはありません。そのためエサ探しも嗅覚頼みです。しかし繁殖期で子供用のエサも必要な時期や、食べ物が少ない環境などでは、昼間も出歩いてエサを探します。
人の生活圏に住んでいるタヌキは、昼間でも道路などでエサ探しをすることも珍しくありません。ゴミあさりをさせない、家庭菜園を荒らさせないことが大切です。防獣ネットを活用するなど、タヌキと人間の暮らし分けはキチッとしましょう。
タヌキは縄張りを持たない動物
タヌキは季節や生活圏によって行動範囲がよく変わる動物です。何頭ものタヌキが同じ地域を行きかうことも珍しくなく、縄張りを持っていないと考えられます。
高さ150cmのフェンスも乗り越えたという身体能力がありながら縄張り争いをしません。タヌキは性格的に争うのは苦手で、共存する道を選んだのです。
タヌキの性格(補足)
タヌキはおっとりしているように見られがちですが、実際は警戒心が強くとても臆病です。行動域が重複しても滅多に争わないのはこのためだといわれています。
音にもとても敏感で、人が気になる程度の音はタヌキにとっては爆音ともいえる騒音です。そのため基本的にうるさい場所には寄ってくることはありません。
臆病な性格ゆえに、些細なことにも身の危険を感じて攻撃的になるのもタヌキの特徴です。単にもうちょっとよく見たいからと気安く近づくと、タヌキは攻撃されると勘違いして鋭い爪などで反撃してきます。
タヌキを見かけたら十分に距離をとり、お互いの距離感を守る。それがタヌキのためにもなることです。相手は野生動物だということを忘れてはいけません。
「狸寝入り」の真実
「眠ったふりをすること」を「狸寝入り」といいます。この言葉の由来は、猟師が放った鉄砲の音を聞いたタヌキが、猟師が仕留めたと思って近づいた途端、逃げ去る様子からついたものです。
実際にはタヌキの臆病な性格が反映されています。鉄砲の音を聞いたタヌキは弾が当たっていなくても、鉄砲そのものの音にびっくりして気絶してしまうのです。このような状態を「擬死」といいます。
猟師が近づいた途端にタヌキが逃げるのは、近づいてくる間に擬死が解けて正気に戻った。ただそれだけのことです。
またこれだけ臆病なタヌキは、道で車と鉢合わせた場合、びっくりして動けなくなってしまいます。タヌキが車に轢かれやすいのはこのためです。クラクションを鳴らすのも、タヌキの性格を考えれば逆効果なのはご理解いただけるでしょう。
くれぐれも安全運転をして、タヌキに限らず動物を轢かずにすむようにしてください。
タヌキにとって命にかかわる病気
タヌキの主要な病気に、イヌジステンパーと疥癬(かいそう)があります。イヌジステンパーは流行病ですが、タヌキの個体数が減ることで2~3年で終息する病気です。そのため影響としては一時的ですむとされています。
しかし疥癬は別です。ヒゼンダニの寄生によって起こるこの病気は細菌の二次感染を招き、全身の毛が抜けて冬に凍死する原因になります。しかも感染経路が不明で、一度流行するとタヌキの個体数に関係なく影響を与え続けるというのです。
そのため疥癬によって個体群が絶滅した地域もあるとされ、タヌキにとっては何よりも恐ろしい病気といえます。
タヌキと間違えられる動物たち
日本にはタヌキとよく似た動物が他にもいます。昔からいるアナグマのほか、平成17年(2005年)に特定外来生物に指定されたアライグマです。アナグマは後姿が、アライグマは顔の模様が特によく似ています。
またタヌキはアナグマの巣穴に間借りすることも多いため、昔から同じ動物と間違えられてきました。タヌキの別称であるムジナはアナグマも指しているのが証拠です。
タヌキと見比べてみると?
タヌキとアナグマ、アライグマをそれぞれ写真で見比べてみましょう。
まずはタヌキ。
そしてアナグマ。
タヌキとは顔つきや体色がはっきりと異なります。
これがアライグマ。
足先の形としっぽの模様がはっきりと異なります。
並べてみると違いが分かりやすいのではないでしょうか。
タヌキの繁殖
特徴
タヌキの繁殖の特徴をまとめると以下になります。
繁殖期 | ・2~4月恋愛期 ・5~6月出産期 ・10月ごろまで育児期 |
縄張り | 持たない |
つがいの形態 | 一夫一妻制 |
営巣場所 | ・キツネの古巣や樹洞などを利用 ・アナグマの古巣の再利用や同居 ・廃屋や水道管などの人工物 |
子育て担当 | つがい |
子供の数 | 1~8頭【幅がある・最高記録は19頭】 |
妊娠期間 | 59~65日 |
子供の体長【生まれたて】 | 約10~15cm |
子供の体重【生まれたて】 | 約60~115g |
目が明くまでの日数 | 10日ほど |
授乳期間 | 30~40日 |
タヌキの相手の選び方
タヌキは恋の季節をむかえると、1頭のメスに3~4頭のオスがアピールします。メスはその中から1頭を選んで晴れてペアが成立するのです。ペアが成立すると、巣の周囲やお互いに尿を掛け合って臭いつけをします。
タヌキの交尾はまるで尻合わせのように見える独特なポーズで行われるのが特徴です。なぜならオスの陰茎は射精するまでメスの体内から抜けません。膨張してメスの膣内に引っかかるようにできているのです。
確実に自分の子孫を残すために進化した結果といえます。
タヌキは相手を一生変えない?
2017年2月、とあるTwitterの投稿から「タヌキは一生涯相手を変えない」「つがいの一方が死ぬとその後は繁殖しない」という話が拡散しました。
確かに繁殖後も同じつがいで行動する様子は確認されています。しかし翌年も同じ相手とペアを組んでいるのかというと、科学的根拠は無いです。
また「連れ合いが死んだ場所に通う」とも投稿されましたが、こちらも根拠は示されていません。
授乳期以降
子ダヌキは生まれてから30~40日間、授乳で育ちます。乳離れし始める5月ごろになると、子ダヌキは親ダヌキについてエサを探すなど、生きるための勉強を始めるのが通例です。
タヌキは夫婦そろって育児をします。そのためオスも一緒に子供たちの世話をするのです。
子ダヌキは4~5か月ほどもすると家族間のつながりが薄くなっていきます。この時期、臆病なタヌキにしては珍しく、子ダヌキ同士で激しく争うことがありますが理由はわかっていません。
冬になり独立した子ダヌキは、生後9~11か月もたつと性的に成熟して繁殖能力を得ます。しかし早々に相手を見つけるタヌキは珍しく、2~3年後になってようやく相手を見つけるのが一般的です。
巣立った子ダヌキはどうする?
タヌキは巣立った後、それぞれ別々に活動するようになります。夏の終わりごろから親離れ、兄弟離れが進みますが、親の活動域で生活する個体もいれば、新天地を求めて出ていく個体もいるのです。
何を基準に決めているのかはわかりません。しかし縄張りを持たないタヌキらしい生き方ともいえます。
タヌキは狩猟獣
鳥獣保護法で定められた狩猟獣
タヌキは「鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)」の第一章第二条7項で定められている「狩猟鳥獣」に含まれます。
要は生息数が多くて農林業にも被害を与えかねない動物の1つです。実際に令和2年度(2020年度)のタヌキによる農業被害額は、環境省のデータによると1億3800万円にもなります。
肉がまずいこともあり狩る人は少ないとされますが、毛皮狙いで箱ワナなどで捕まえる人もいる動物です。
タヌキの狩猟には許可が必要
タヌキが狩猟獣に指定されているとはいえ、実際に狩りをするなら許可が必要です。狩りで使う道具によっては所持許可や使用許可を取る必要があります。
また狩猟可能期間や狩猟可能地区などにも細かい規定があるので確認が必要です。
狩猟期間は環境省によると毎年11月15日~翌年2月15日(北海道では10月1日~翌年1月31日)が基本となっています。では狩猟許可を申請するのはどこでしょうか。実は各自治体です。狩猟期間も自治体によって異なる場合があります。狩猟をするために必要なことは環境省狩猟ポータルで確認してください。
1日にとってもよいタヌキの数
国による頭数の制限はありません。そのため法律で許可された範囲内なら自由に狩猟できます。
タヌキと人間の関わり
食
「タヌキ汁」という料理がありますが、実際のタヌキの肉はかなり臭みが強く、また固いことから食用には適さないとされています。おそらくアナグマの肉だろうと推測されているほどです。
また「タヌキ汁」は「こんにゃく汁」を指すこともあり、必ずしもタヌキを使っているわけではありません。
タヌキを食べるためにはさまざまな薬味や酒などの調味料で臭みを消す必要があります。中国では今も一部地域で食用にされていますが、やはり血抜きや臭み消し、よく煮込む必要があるなど、調理や食べ方にもコツがあるのです。一方でタヌキの胆のうや肝臓などは、風邪や胃炎、急性肺炎などの薬になるという民間療法もあり、利用されてきました。
毛皮
タヌキの毛皮は上質とされ、昔から高値で取引されてきました。手元にないものを当てに計画を立てることを「捕らぬ狸の皮算用」といいますが、このことわざはかつての事情からきた言葉です。
タヌキの皮は毛皮としてだけでなく、鍛冶などで使う送風機「ふいご」にも最適とされました。それだけ丈夫だったということです。実際ふいごのほかにも太鼓に使用されたといい、タヌキの皮が珍重されていた様子がわかります。タヌキの毛皮は防寒具にも最適といわれ、乱獲により絶滅寸前になった場所もあるほどです。現在も海外では評価が高く、アメリカでは本物のタヌキの毛皮をフェイクと偽り、何かと問題になっています。
タヌキは毛も上質
タヌキは毛皮だけでなく、毛そのものも上質とされます。ラクーンと呼ばれるタヌキの毛は、筆の材料として平安時代にはもう珍重されていました。現在でも歯ブラシをはじめ、さまざまな用途で使用されています。
タヌキが人間のそばで生活する弊害
交通事故
タヌキと人間の生活域が重なることで起こる弊害の1つが交通事故で死ぬタヌキの増加です。特に親離れしたばかりの子ダヌキが事故にあいやすい傾向にあります。実際交通事故死するタヌキの数は、10~11月が最も多いです。
そのためタヌキの絵が書かれた標識が道路に立っているのを見たことがある、という人は多いのではないでしょうか。
単純に高速道路で交通事故にあうタヌキの数は、東日本よりも西日本の方が多いです。これは高速道路の構造にも問題があると指摘されています。
餌付け
タヌキが人間のそばで生活する弊害に、餌付けがあげられることがあるのをご存じでしょうか。タヌキにエサを与えることにより人間の生活圏とタヌキがより密接になります。その結果さまざまな問題が起こるのです。
まずはタヌキの餌付けに使われるエサの質の問題。多くの場合エサの栄養バランスが悪いため、周囲の農作物に被害が出る原因になることがあるのです。
さらに餌付けされた人家がため糞場になり、その悪臭によりタヌキを殺処分する事態になることもあります。タヌキが自力で生きていく力を奪わないためにも、またタヌキと人間の住み分けをきちんとするためにも、餌付けは決して行わないようにしましょう。
タヌキを轢かないために
車通りの多いところに慣れているタヌキは、基本的に道の端をお行儀よく歩いて通ることを知っているようです。しかし田畑のど真ん中を突き抜けているような道の場合は、トコトコと歩いて横断しようとします。
目の前にタヌキが飛び出してきたときは、とにかくまず速度を落としましょう。ヘッドライトで照らされるとタヌキはびっくりして固まってしまいます。しかし少しすると正気に戻って移動してくれるので、それまで待ってあげることが大切です。
やってはいけないことは、ヘッドライトを上下に動かしたり、クラクションを鳴らしたりすることです。余計にタヌキを驚かせ、完全に固まってしまいます。ときには判断を誤らせて、車に突撃してくることもあるのです。「郊外は人通りが少ないから」とスピードを出しがちですが、人の代わりに動物が通ります。速度を出し過ぎずに動物にも配慮した運転をしてあげてください。
タヌキの伝承
タヌキは昔話をはじめ人気者
人間の身近に住んでいたタヌキは、昔話をはじめ数々の話に登場する動物です。
有名な民話としては、全国に似たような話がある「分福茶釜」、ウサギがタヌキを懲らしめる「カチカチ山」を思い浮かべることでしょう。
またタヌキはキツネと同様に人を化かす動物としても有名でした。日本国内でも特に有名な化けダヌキの話にはどのようなものがあるのでしょうか。
化けダヌキの代表「日本三名狸(にほんさんたいめいたぬき)」
新潟県佐渡島の「佐渡団三郎狸(さどだんざぶろうだぬき)」
佐渡島からキツネを追い出した、病気になると人に化けて医者にかかっていたなど、数々の伝説を持つ佐渡のタヌキの総大将として描かれている化けダヌキです。
人を化かすだけでなく、困った人には金を貸していました。その金も人に化けて金山で働いたり、盗んだりして稼いでいたものです。
現在では佐渡の相川町に二つ岩大明神として祀られています。
兵庫県淡路島の「淡路芝右衛門狸(あわじしばえもんたぬき)」
芝居見物が好きだった、出かけ先の芝居小屋で命を落としたら客入りが悪くなったなどの伝説を持ったタヌキです。そのため芸能の人気の神として、淡路島三熊山に柴右衛門大明神として祀られています。
ただしこの柴右衛門は、徳島県で異なる説話のあるタヌキです。このことから明治3年(1870年)の洲本と阿波の争いをタヌキになぞらえたものとする説もあります。
またかくまっていたオランダ人が見つかったときにタヌキが化けたものと言い訳したとする説もあり、憶測もさまざまなものがあるのが特徴です。
香川県屋島の「屋島太三郎狸(やしまのたさぶろうたぬき)」
平重盛に助けられたタヌキの子孫の太三郎狸の説話で、屋島寺の御用タヌキとして善行を積んだとされています。
屋島に悪いことが起こりそうなときは屋島寺住職にすぐに伝えていました。また鑑真や空海に感銘を受け、若いタヌキたちに勉学を教えたとも伝えられています。
このほかにも数々の伝説を持つ太三郎狸は、屋島寺に「蓑山大明神」の法名で氏神として祀られているタヌキです。実はこの太三郎狸は、ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』の「太三朗禿狸」のモデルでもあります。背景を知って見直してみると、また違った味わいがあるかもしれません。
タヌキ信仰
海外でタヌキというと、いたずら者のような悪いイメージしかありません。しかし日本では憑き物信仰や言霊信仰などと結びつき、独自のタヌキ信仰があります。信楽焼のタヌキに代表されるように「他を抜く」という語呂合わせも手伝って、縁起物としても人気の動物です。
タヌキは飼える?
タヌキは基本的には飼えない
タヌキを飼うためには、まずは「鳥獣保護法」をクリアする必要があります。狩猟期間に捕獲し、さらに住んでる場所の自治体から「生涯飼養許可」を取らなければなりません。
狩猟に関してもさまざまな規定がありますが、タヌキは狩猟獣のために特定の期間であれば捕獲自体は無許可でできます。飼育には先ほどの自治体の許可が必須です。無許可で飼育していると禁固刑もあり得るので注意してください。
タヌキのエサは?
食性が犬と似ているため、ドッグフードがおすすめです。そのほかにもおやつとして果物や野菜、昆虫などをあげるとよいでしょう。子ダヌキの場合は犬用ミルクが最適です。
タヌキを飼うのに必要な道具は自力で用意
本来は飼う動物ではないため専用の道具は売っていません。
そうはいってもケージは用意したほうがよいので犬用のケージを代用するのがおすすめです。タヌキが落ち着ける広さがあるものを用意してあげてください。
またトイレは必ず用意することです。ため糞場を使う習性のあるタヌキだけに、決まったトイレを用意してあげましょう。
タヌキを飼うときの注意点は?
タヌキを飼うときの注意点はいくつもあります。理解した上で飼育しましょう。
タヌキの性格上の問題
臆病で警戒心の強い性格が問題になりがちです。ちょっとした音にも敏感に反応するだけでなく、うっかり叱るだけでも攻撃されたと勘違いします。そのためストレスを感じやすい動物ともいえるでしょう。特に大人の状態で飼い始めるときは、まずなつかないと思って飼った方がよいくらいです。信頼関係を築くまでにはかなりの時間が必要になります。エサさえあげればすぐなつくと思ったら大間違いです。
タヌキの習性上の問題
タヌキは夜行性のため夜に鳴くことがあります。近所への迷惑にならないよう、特にストレスには注意することが大切です。めったに鳴く動物ではありませんが、威嚇するときには声をあげます。
タヌキの体質上の問題
タヌキはフンをはじめ臭いの強い動物です。トイレをこまめに掃除をする必要があります。掃除をおこたると臭いが原因で手放さざるを得ない状況になることもあるので覚えておきましょう。
タヌキが病気になっても診察先が問題
病気には特に要注意です。タヌキはまず飼う動物ではないため、病気になっても動物病院で診てもらえるとは限りません。あらかじめ近所の動物病院に確認をとってから飼い始めた方が無難です。
タヌキを飼えないなら
こんな癒し動画はいかが?
タヌキの動画を集めてみました。ぜひご覧になってください。
まずは鳴き声の動画から。こんな声をしています。
ちょっと困っちゃう。けどかわいいタヌキさんです。
こちらは意外な救出劇です。動画でご確認ください。
タヌボンボン
以前、夜に農地の真ん中を車で通ったとき、タヌキが道に出てきたことがありました。こちらに気付くと固まってしまいましたが、少しすると反転して畑に戻っていったものです。
特に冬はコロコロとした見た目がかわいいタヌキ。海外ではパンダ並みの珍獣です。
ちょっとでも郊外を走るときはスピードは控え目に。動物にもやさしい運転をしてあげてください。