みょうが(茗荷)【庭の草木や花々】
柿の実を収穫していたら根元に植えてあるみょうがが花芽を出していました。夏は暑さ負けから手をかけられず、雑草に半分埋もれている我が家のみょうが。暑さが和らいで雑草を取り除いたらみょうがも安心したのでしょうか。そんなみょうがについて気まぐれに調べてみました。
みょうがってどんな植物?
みょうがの基本情報
園芸分類 | 野菜 |
形態 | 多年草 |
原産地 | 東アジア ・日本にあるものは中国渡来とされる ・中国や朝鮮半島、台湾にも自生する |
丈 | 40~100cm |
開花期 | 7~10月 |
花色 | 薄黄色・白 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | やや強い |
みょうがの特徴
みょうがはショウガ科ショウガ属の宿根性の多年草です。日本では本州から沖縄まで自生しますが、一般的に広く栽培されて売られています。
みょうがは細い円柱状の多くの節を持つ地下茎を地中にはわせて広がるのが特徴です。芽は地下から茎を伸ばして葉を広げているように見えますが、実際には葉が巻き重なったもので「偽茎」と呼ばれます。葉として広がったものは長さ20~30cm、幅は3~6cmの長楕円形か、葉先がとがった披針形です。
一方で花は偽茎とは別に伸ばした花茎の先に付けます。長さは5~7cmほどの長楕円形をした花序で、私たちがみょうがとして食べている部分です。花序は何枚もの苞が巻いたもので、間から次々と花芽を出して咲きます。花は1日でしぼんでしまう1日花です。
みょうがは雌雄同株のためにおしべとめしべを供えた花を咲かせますが、種そのものは滅多にできません。さらに5倍体と染色体の組数も奇数のため、親株と同じ数の染色体数になることも稀という変わった植物です。花をいつ咲かせるかで夏みょうがと秋みょうがに分かれます。産地ごとに土着の在来種が栽培されてきました。意外なことはみょうがの食用栽培を行っているのは日本だけとされること。そのためか英語でみょうがは「Japanese Ginger」とも呼ばれます。
みょうがの花言葉は?
みょうがにも花言葉があります。「忍耐」と「報いられない努力」です。
「忍耐」はみょうがが大木の陰に群生し、葉に比べて小さい花を根元にひっそりと咲かせる様子から付きました。
一方の「報いられない努力」は親と同じ種を残せないことや、花が一日でとじてしまう様子がむなしさを感じさせることが元となっています。
みょうがが由来となった地名もある
東京都小石川や小日向にはみょうがに由来する「茗荷谷」という地名があります。
江戸時代のこと。牛込早稲田から小石川まで広大なみょうが畑が広がっていました。ちょうど茗荷谷は畑を見下ろす谷だったのです。
江戸時代の様子がよほど印象的だったのでしょう。今も地名として残っているのです。
みょうがの育て方
日当たり
木の影や庭の片隅など、半日陰~日陰を好みます。日当たりのよい場所や乾燥しやすい場所は苦手です。特に花序は光が当たると硬くなって風味も低下します。敷きワラや腐葉土などを被せながら管理するのがおすすめです。
温度
生育適温は20~25℃。暑すぎると花序の色がくすんでくるだけでなく生育も悪くなります。特に夏は直射日光の当たらない場所を選ぶことがポイントです。
土
プランターの場合は保水性のある野菜用の培養土を使えば大丈夫です。
地植えの場合は土づくりから始める必要があります。みょうがを植え付ける2~3週間前に消石灰や苦土石灰を土に混ぜ込んでおきましょう。目安は1平方メートルあたりに約100gです。
石灰を混ぜてから1週間後に、今度は完熟堆肥と元肥を土に混ぜます。目安は1平方メートルあたりに堆肥約2kg、窒素・リン酸・カリがそれぞれ8の緩効性化成肥料約100gです。
石灰と窒素分を含む肥料を同時に使用しない理由は化学反応を起こして窒素分が抜けるのを防ぐため。必ず間をおいて土に混ぜ込むことがポイントです。よく耕して土壌がしっかりすれば、植え付け後の根張りもよくなり健康に育ちます。
もしすぐに植え付けたい場合は有機石灰と完熟堆肥、有機肥料を混ぜ込んでください。
植え付け
みょうがは根茎(地下茎)かポット苗を購入して植え付けます。植え付け適期は3~4月ごろです。ポット苗の場合は5月ごろまでを目安に植え付けます。
プランターの場合
プランターは深さ30cmほどの丈夫なものを選びましょう。鉢底ネットを敷いたら軽石を入れ、培養土を入れたら植え付け開始です。
根茎の場合は深さ約5cmの植え穴に植え付けます。1つのプランターに2~3株が目安です。等間隔に芽が上を向くよう配置し、しっかり土を被せます。植え付け後はたっぷり水を与え、芽が出たら敷きワラをして乾燥を防ぐのがポイントです。
ポット苗の場合は植え付けたら水をやり、早々に敷きワラで保護してください。
地植えの場合
60cm幅の畝(うね)に15~30cm間隔で約5~10cmの穴をあけて根茎を植え付けます。芽が上向きになるように入れて土をしっかりと被せたら、水をたっぷりと与えて完了。芽が出てきたら腐葉土を10cmほど被せるか、敷きワラをして乾燥しないよう根元を保護します。
ポット苗は苗土を崩さないよう注意しながら15~30cm間隔で植え付ければ大丈夫です。水をたっぷりとあげたら乾燥しないよう敷きワラを忘れずに。
苗の選び方
根茎の場合は長さが15~20cmほど、芽が2~4個付いている太くて充実した株を選びます。
切って使うこともできますが、あまり細かく切ると収穫できるのは翌年以降になってしまうことも。なるべく購入時のままか芽の数に合わせて切るくらいがおすすめです。ポット苗の場合は葉の節間が短くて引き締まり、勢いもある元気な苗を選びます。緑が濃く、芽も太いものがおすすめです。
水やり
プランターの場合は水切れを起こさないよう、土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷり与えます。葉先がだらんと下がっているようなら水やりのタイミングです。
ただし水のやりすぎは根腐れの元になるので要注意。みょうがのサインに目を配って適切に水やりをすることが枯らさないポイントです。
プランターで育てる時に間違えがちなのは冬の水やり。みょうがは冬は休眠しますが土は適度に湿っている必要があります。カラカラに乾かさないように必要なら水やりを続けてください。地植えの場合は基本的に水やりをしなくても問題ありません。ただし雨が降らない日が続くなど、乾燥しているようなら水やりで補いましょう。
肥料
葉がよくしげったころにプランターの場合は1鉢で30gほど、地植えの場合は1平方メートルあたり20gほど、緩効性化成肥料をまいておきます。敷きワラの上でも問題ありません。みょうがの収穫が終わった後にも追肥して、株を翌年に向けて充実させます。気温が下がって地上部が枯れたら冬支度です。地上部は刈り取り、プランターなら土の上に堆肥を少量、地植えなら防寒も兼ねて腐葉土をかけます。
剪定
株が混み合ってきたら風通しをよくするために剪定します。葉が開き切ったものの中から細いものや古いものを根元から切り、7~8cm間隔に間引いてください。特にプランターは蒸れやすいので風通しのよさを意識するようにします。
収穫
株の充実具合にもよりますが、通常植え付けから1~2年で収穫できます。
一般的ないわゆる花みょうがは株の周りに出てくるのが特徴です。7~10月の収穫時期には株の周りに出ていないか確認します。花序の収穫は手で根元を折るように取れば簡単です。花が開くと風味が落ちるため、出てきたらすぐに収穫しましょう。
より株が充実した2~3年後なら、新芽を遮光し軟白するように育てればみょうが茸を収穫することもできます。2~3週間の遮光期間を経て20cmほどになれば収穫時です。
植え替え
最初の植え付けから4年もすると株が混み合ってきます。放置すると株が弱るのでプランターならできれば2年に1度、地植えでも4年に1度植え替えをするとよいでしょう。植え替え適期は2~3月です。根茎を掘り起こして充実した株を選んで植え直します。プランターの植え替え時に残す株の数の目安は半分以下が最適です。
増やし方
みょうがは種を付けないだけでなく、付けても親株と同じになるとは限りません。種では増やせないことから株分けで増やすことになります。
株分けは植え替えの時にあまった株を使うとよいでしょう。充実した株を選べば植え付けた年から収穫できます。
病害虫
地植えの場合、同じ場所で育て続けると根茎腐敗病になることがあります。葉の下から黄色くなり、葉がしおれるだけでなく根元から腐ってくることも。
治す方法がないため病気の株を引き抜いて蔓延を防ぐしかありません。植え替える時に植え付け場所を変える、ホームセンターなどで常に新しい株を買ってきて更新するなどの予防方法があります。
プランターと地植え共に気をつけたい害虫はアワノメイガの幼虫です。葉が食害されていたら早めに裏を確認して捕殺しましょう。
同じようにヨトウムシも葉を食害します。アワノメイガと同様に早めに捕殺しないと一晩で丸裸、ということになりかねません。
ナメクジも注意したい害虫です。食害されていなくても歩き回った後が残っていることも。夜に確認するのが一番ですが、大変だという場合は誘引駆除剤がおすすめです。
みょうがの栄養
みょうがの主な栄養
文部科学省の食品成分データベースによると、100gあたりのみょうがの主な栄養成分は以下の通りです。
エネルギー | 11kcal |
タンパク質 | 0.9g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 2.6g |
食物繊維 | 2.1g |
カリウム | 210mg |
マグネシウム | 30mg |
マンガン | 1.17mg |
モリブデン | 8μg |
ビタミンK | 20μg |
葉酸 | 25μg |
同様に100gあたりのみょうが茸の主な栄養成分は以下の通りです。
エネルギー | 6kcal |
タンパク質 | 0.4g |
脂質 | 0.1g |
炭水化物 | 1.5g |
食物繊維 | 1.1g |
カリウム | 350mg |
マンガン | 1.44mg |
みょうがに多く含まれる栄養成分
食物繊維
別名「第6の栄養素」。便通を整えて便秘の予防に貢献します。脂質や糖、ナトリウムなども吸着して体外に排出するため、体質改善をはじめ生活習慣病の予防や改善も期待できる成分です。通常の食生活で取り過ぎることはまずありませんが、サプリメントで補っている人は要注意。ミネラルをはじめ必要な栄養素の吸収を阻害する可能性が指摘されています。
カリウム
細胞の浸透圧を調節して一定に保つ働きをしています。筋肉の収縮や体液のphバランスを保つなど、様々な働きを持つ重要な栄養素です。体内の余分なナトリウムを体外に排出することから、塩分過多の予防にも欠かせません。
不足すると脱力感や食欲不振、精神障害、不整脈などが起こるとされます。逆に過剰摂取した場合は体内の調節機能で余剰分は排出されるため、体調に異常をきたすことは稀とされる栄養素です。
マグネシウム
リンやカルシウムと共に骨を形作るだけでなく様々な代謝を助けている栄養素です。体内にあるマグネシウムの約6割は骨や歯に含まれています。300種類以上の酵素の活性化にかかわり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調節にも欠かせません。
不足すると骨の形成異常はもちろん、不整脈や高血圧、心疾患、筋肉のけいれんなどが起こるとされます。一方で通常の食事では摂り過ぎることはありません。また、余分なマグネシウムは腎臓から排出されるので大丈夫です。ただし腎臓に疾患がある場合は血液中のマグネシウム濃度が高くなることがあります。またサプリメントや薬で摂り過ぎて下痢を引き起こすこともあるため要注意です。
マンガン
様々な酵素の構成成分として欠かせない栄養素です。骨の形成にも関与しています。不足すると脂質や糖質の代謝に必要な酵素や抗酸化作用のある酵素が作れません。成長や生殖にも悪影響が出るため要注意です。
モリブデン
鉄分を活用するための酵素の主要成分で間接的に貧血を予防する効果があります。炭水化物や脂肪の代謝も助ける栄養素なので健康維持に欠かせません。必要量は少量ですむため不足を心配する必要のない栄養素です。
ただし過剰摂取はしやすく、銅欠乏症になることがあるとされています。
ビタミンK
脂溶性ビタミンの一種で出血時の止血因子を活性化させる効果があります。骨にあるたんぱく質も活性化させて骨の形成を促すことから、骨粗しょう症の治療薬にも使われるビタミンです。通常は多くの食品に含まれていること、腸内細菌も作り出すことから欠乏症は起こりにくいとされています。ただし抗生物質により腸内細菌の状態が悪くなっている人や、まだ腸内細菌の少ない乳幼児は欠乏症に要注意です。
葉酸
水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、細胞増殖に必要なDNA合成にかかわっています。またタンパク質の合成の過程で必要とされるアミノ酸を作り出すためにも必要です。これらの働きから妊娠初期の胎児の発育に必要不可欠な栄養素で、不足すると先天性の異常を発症しやすくなることがわかってきました。大人でも不足すると悪性の貧血を引き起こしやすくなるとされるため、意識して摂るようにしたい栄養素です。
ビタミンB類もバランスよく含んでいる
必要量に対しての含有量は低めですがビタミンB群をバランスよく含んでいます。脂質や炭水化物の代謝にかかわるため、健康維持に欠かせない栄養素です。
水溶性ビタミンであることから体外に排出されやすいので、過剰摂取にはなりにくいとされています。
そのほかの健康成分
みょうがの香り成分であるαピネンには、胃酸の分泌を促すことで食欲増進や消化促進の効果が期待できます。また血行もよくして発汗を促したり、脳を刺激して眠気を覚ましたりする効果も期待できるとか。みょうがの色素も注目です。目によいとされるアントシアニンで、ポリフェノールの一種であることから抗酸化作用も期待できます。
みょうが茸に多く含まれる栄養成分
遮光して軟白栽培するためか栄養成分は花みょうがと比較すると控え目です。
ただしカリウムとマンガンに関しては話は別。花みょうがよりも多いので、濃い味付けが好きで塩分が気になる、むくみがひどい、代謝を上げたいなどの悩みがある人は試してみるのもよいでしょう。
※栄養成分参考文献
みょうがの切り方
せん切り
- みょうがを手早く洗ったら、根元を少し切り落としてから縦半分に切る
- 根元を芯をとるように山型に切り込みを入れる(つながっても気にしないなら必要なし)
- 縦割りにした時の切り口を下にして、できるだけ細く繊維にそってせん切りにする
- 水にサッとさらしてざる上げし、水気をしっかり切る
小口切り(輪切り)
- みょうがを手早く洗ったら根元を少し切り落とす
- 端からできるだけ細い小口切りにする
- みょうがを水に入れたら素早く箸でほぐし、ざる上げしてしっかり水気を切る
注意したいポイント
みょうがの栄養の多くは水溶性です。水にさらすと流れ出てしまうため手早くすませるようにしましょう。
みょうがの保存法
冷蔵保存(保存可能目安10日)
- キッチンペーパーを湿らせてからみょうがを包む
- 保存袋や保存容器に入れてしっかり密封する
- 冷蔵庫の野菜室で保存する
- 1~2日を目安にキッチンペーパーを交換する
冷凍保存(保存可能目安2か月)
- みょうがを洗ったらキッチンペーパーなどで水気を拭き取る
- みょうがは1個ずつラップで包む
- 冷凍用の保存袋に入れたら金属製バットの上にのせて冷凍する
- 使う時は凍ったまま切るか、常温で4~5分置く
切ったみょうがの冷凍保存(保存可能目安2週間)
- 洗ったみょうがの水気を拭き取り、せん切りか小口切りにする
- 1回分に分けてラップで包み、冷凍用保存袋に入れたら金属製バットの上にのせて冷凍する
- 使う時は凍ったまま加熱料理に使うのがおすすめ
みょうがの食べ方
なすとみょうがの味噌汁
みょうがの美味しい季節はなすも旬。いつもの味噌汁とちょっと目先を変えて旬の組み合わせを楽しんでみるのもおすすめです。レシピはこちら。
混ぜるだけ★みょうが★簡単おつまみ大量
みょうがを切ってごま油や醤油で作った調味料で和えるだけ。応用もきくので飽きることがありません。大量に収穫できた時にもおすすめの一品です。レシピはこちら。
みょうがの甘酢漬け
みょうがの色も映える小鉢にぴったりの一品。いろいろな料理のアクセントとしても活躍してくれます。色付けをしていないのでみょうがの色がそのまま仕上がりに影響しますが、それがまた味になる調理法です。レシピはこちら。
みょうがご飯
みょうがの風味をご飯と楽しむ一品。簡単なのにみょうがの美味しさも引き立ちます。思いつきでいろいろなものと組み合わせてアレンジしてみるのもおすすめです。レシピはこちら。
きゅうりとミョウガのさっぱりサラダ
夏野菜で作るさっぱりサラダ。コツはみょうがにしっかり醤油を浸み込ませることだそうです。居酒屋さんのメニューをアレンジしたというだけあって、お酒のお供としてもやみつきになりそう。レシピはこちら。
季節の香りと彩り
我が家では咲き始めた花でみょうがに気付くため、料理の前に庭の彩りになっています。定番はみょうがのおつゆ。味噌汁でもよいのですが、なんとなく香りがより引き立ちそうな澄まし汁でいただいています。
養いがあまりよくないのにぷっくりとした花序をいつもありがとう。また来年もよろしくね。