蝋梅(ろうばい)【庭の草木や花々】
新春の花のイメージの蝋梅ですが、花期は1か月以上と長く楽しめます。我が家の庭にも蝋梅の木があり、2月も半ばとなりましたがまだまだ花は終わっていません。そんな蝋梅について気まぐれに調べてみました。
蝋梅ってどんな植物?
蝋梅の基本情報
園芸分類 | 庭木・花木 |
形態 | 落葉低木 |
原産地 | 中国 |
樹高 | 4mほど |
開花期 | 12月中旬~2月【場所によって開きあり】 |
花色 | 黄【香りがある】 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
蝋梅の特徴
蝋梅はクスノキ目ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木です。日本には江戸時代に渡来しました。蝋梅は名前に「梅」と入っていますが、梅の仲間ではありません。梅はバラ目バラ科サクラ属の植物です。まったく異なる植物であることがわかります。
雪中四友(せっちゅうしゆう)の1つ
雪中四友とは中国の言葉で、文人が好んで描いた早春に咲く花です。
中国では職業画家の技法に走った絵よりも評価される絵があります。学問に通じ、文章にもたけた人(文人)が描いた絵です。精神性の高い優れた絵と評価されてきました。
雪中四友にはこの蝋梅の他に、梅、水仙(スイセン)、山茶花(サザンカ)があります。
本場中国での雪中四友は「玉梅・蝋梅・水仙・山茶」です。玉梅は白梅を指します。山茶はツバキ類一般とするのが本来の解釈です。
しかしツバキに香りが無いことから、山茶を山茶花と解釈することも珍しくありません。
蝋梅は俳句の季語でもある
蝋梅は冬の季語です。江戸時代の後期に定着したといいます。
表す季節は冬ですが、春の訪れを予感させる季語です。
蝋梅の名前の由来
諸説ある中で一般的にいわれている由来は次の3つです。
- 中国名の「蝋梅(ラーメイ)」を日本語読みした
- 半透明の花びらが、まるで蝋細工に見える
- 陰暦の12月である臘月(ろうげつ)に花が咲く
ちなみに蝋梅の英名は「Winter sweet」といいます。寒い冬でも甘く香って咲く蝋梅にぴったりな名前です。
蝋梅の花言葉
蝋梅の花言葉は「慈愛」「慈しみ」「ゆかしさ」「先見」「先導」です。
「慈愛」「慈しみ」「ゆかしさ」は、冬という花の少ない時期に黄色い花を咲かせることからつきました。また鳥にとって餌の少ない時期、空腹を満たしてあげるからという説もあります。そして「先見」「先導」は、春になると咲き始める花々より先だって咲くからです。この花言葉が定着した理由は俳句からきているという説があります。季語のイメージがそのまま花言葉としても定着したのです。
蝋梅の品種
素心蝋梅(ソシンロウバイ)
蝋梅の中で最も一般的な園芸品種です。そのため庭先や公園に植えられている蝋梅の多くがこの品種になります。
花びらの大きさは2cmほど。中心まで黄一色の花をたくさん咲かせます。花は丸みを帯びていて濃い黄色をしていることから、遠目でもよく目立つ品種です。
満月蝋梅(マンゲツロウバイ)
素心蝋梅(ソシンロウバイ)の実生(みしょう:種から芽を出した苗)を選抜して作られた品種です。蝋梅の中でも早咲き品種で、12月終わりごろから咲き始めます。
さらに素心蝋梅と比較して花も大きく色は濃く、花の中心部が赤紫色をした株まである品種です。香りの強い株が多い点も特徴といえます。
和蝋梅(ワロウバイ)
「和」と名前についていますが、中国原産の原種です。花の中心は赤紫色で、花びらが細長いという特徴を持っています。
蝋梅の育て方
日当たり
蝋梅には日当たりのよい場所が望ましいです。しかし日陰や半日陰でもよく育ちます。
土
土質は水はけがよければ特に選びません。土の水はけが気になる時は腐葉土や完熟堆肥を混ぜ込みます。
鉢植えにする場合、小粒の赤玉土6~7に腐葉土3~4を混ぜた土あるいは市販の培養土がおすすめです。
植え付け
植え付けは落葉期で花が咲く前の11~12月か、終わった2月中旬~3月に行います。ただし関東より西の冬でも暖かい地域なら、11~3月にかけて植え付けを行っても大丈夫です。もし鉢植えにする場合は、深さが30cm以上ある10号鉢へ植え付けます。
水やり
地植えの場合は特に水やりをする必要はありません。土が常に湿っていると、根腐れを起こして枯れてしまいます。鉢植えの場合は土の表面が乾いてから水やりをします。ただし植え付けや植え替え直後の場合、根付くまで2週間ほどは乾燥させないように気をつけましょう。根元にワラや不織布などを敷いて覆っておくと乾燥から守れます。
肥料
花が咲き終わった2~3月と生長期の8~9月に、緩効性化成肥料や有機質肥料(固形の油かすなど)を施します。注意するポイントは窒素分の多い肥料を避けることです。蝋梅に窒素分の多い肥料を与えると、枝葉ばかりが茂って間延びした樹形になってしまいます。肥料の窒素分を必ず確認しましょう。
植え替え
鉢植えの場合は植え替えが必要です。根詰まりしないよう、毎年1回り大きい鉢に植え替えます。
植え替える前に「根回し」をするのがおすすめです。根を切りそろえて根付きがよくなるようにします。
大きさを調節してもおさまる鉢がなくなったら、地植えにしてください。
剪定
剪定は11~3月の間にすませます。
蝋梅は年を重ねるごとに自然と樹形が整っていく特徴のある木です。そのためある程度育てば枝を間引く程度ですみます。若木の時はしっかり剪定をして形を整えてください。
注意点は剪定時期を間違えないことです。蝋梅はその年伸びた枝に6月ごろ花芽をつけます。そのため剪定時期を間違えると花が咲きません。
花つきが悪い場合は、剪定の時期を見直してみてください。
増やし方
蝋梅の増やし方には2つの方法があります。
- 挿し木による増やし方【発根する確率が低い】
- 種をまく増やし方【おすすめ】
挿し木で増やす場合は6月が適期です。柔らかい枝を10~15cmの長さに切って、切り口には発根促進剤を塗ります。それから小粒の赤玉土など清潔な土に挿してください。あとは根が生えてくるまで乾燥しないように管理します。
種をまいて増やす場合は夏~秋に実を採取しましょう。次に中から種を取り出します。小粒の赤玉土や市販されている種まき用培養土にまけば大丈夫です。
用意した育苗ポットに用土を入れたら、種の3倍くらいの深さまで指で穴をあけます。種をまいたら土を被せて完了です。
土が乾かないよう気をつけて管理していると春に発芽します。本葉が3~5枚になったところで1回り大きい鉢に植え替えてください。
種は実の中
蝋梅の実は一見そのもの自体が種に見えます。しかし本当の種は中にある粒です。1つの実に入っている種の数は数個~10個ほど。
蝋梅は発芽率がよいのでかなりの数が発芽します。気がつくと木の根元に芽が出ていたなんてことも珍しくありません。
ただし発芽した芽が花をつけるようになるまで、8~10年かかることもあります。早く花をみたいのであれば、それなりに育った苗を購入してくる方がよいでしょう。
病害虫
特にありません。葉に異常が出たら、過湿か根詰まりを疑ってください。水やりを控え、地植えは根元を掘り起こし、鉢植えは毎年植え替えて土を柔らかくすれば改善します。
蝋梅には薬効と毒性の両面がある
蝋梅の薬効
蕾から抽出したエキスの蝋梅油には薬効があります。やけど治療や咳止め以外にも、解熱作用、鎮痛作用、抗菌作用のある生薬です。
またその香りはアロマオイルとしても人気があります。独特の甘い香りは「シネオール」「ボルネオール」「リナロール」などさまざまな成分で構成されたものです。
これらのアロマオイルには、鎮静作用、精神安定効果、空気清浄などのアロマセラピー効果があります。リラックスしたいときには特におすすめです。
蝋梅の毒性
蝋梅は種子などに、アルカロイドの一種で有毒物質でもあるカリカンチンという成分を含んでいます。
このカリカンチンは、中毒症になると毒物のストリキニーネに似た症状を引き起こすのです。具体的には激しい強直性けいれんや後弓反張(体が弓形に反る症状)のほか、顔が引きつって笑ったような顔になる、といった症状も出ます。日本では、2016年に埼玉県で羊が素心蝋梅(そしんろうばい)の種子を食べたあと、起立不能となる中毒症を発症しました。全ての蝋梅に含まれている有毒成分のため、種子を口に入れてはいけません。
蝋梅の名所
【栃木県】上永野 蝋梅の里
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
栃木県鹿沼市にある日本有数の蝋梅園です。4,000坪ある園内に約5,000株の蝋梅が植えられています。12月中旬から開園し、3月中旬まで楽しめる蝋梅園です。
上永野蝋梅の里の特徴はその規模だけではありません。日本国内では最多の4種類の蝋梅を見ることが出来ます。「和蝋梅(わろうばい)」「素心蝋梅(そしんろうばい)」「満月蝋梅(まんげつろうばい)」のほかに、「基本種」が見られるのはここだけです。
【群馬県】ろうばいの郷
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
群馬県安中市にある、こちらも日本有数の蝋梅園です。遊休農地となっていた土地に地元の農家の方が蝋梅を植え始め、今では3.2ヘクタールもの土地に1,200株が咲き誇ります。
1月頭から開園し、「ろうばいまつり」と題したイベントも見ものです。チェックしてみてはいかがでしょうか?
【埼玉県】宝登山 ロウバイ園
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
埼玉県秩父市長瀞町にある、標高497mの宝登山(ほどさん)山頂にある蝋梅園です。山頂へは登山を楽しみつつ行くこともできますが、ロープウェイもあるため全国から多くの人が鑑賞に訪れます。
宝登山の山頂一帯に3,000本が咲き乱れる様は見事の一言です。
【群馬県】桜山公園
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
埼玉県との県境近く、かつて鬼石町だった場所にある冬桜の名所です。近くを神流川が流れ、春にも桜を楽しめます。ロウバイ園も見事なので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
【東京都】府中市郷土の森博物館
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
東京都府中市にある郷土の森博物館には「ロウバイの小径」があります。平成16年度にサントリーから寄贈された31本の蝋梅をきっかけに誕生した名所です。
平成18年まで区画整理しながら植樹し続け、約100本の蝋梅を楽しめる小径が完成しました。その後、台風などで数は減らしたものの、約90本の蝋梅を楽しむことができます。
【神奈川県】寄(やどりき)ロウバイ園
園内の様子はこちらの動画をどうぞ。
神奈川県足柄上郡(あしがらかみぐん)松田町宇津茂地区にある、こちらも日本有数の蝋梅園です。平成18年に地元の中学校の卒業生が植えた250本から始まりました。
その後も植樹し続けた結果、今では20,000本を超える一大蝋梅園になりました。今では毎年「ロウバイまつり」も開催されて、年々訪れる人の数が増えています。
まだまだある!蝋梅の名所
名所の多くは関東圏に多いのが現実です。ですが岡山県や徳島県、香川県など、他地域にも名所といわれるところがあります。蝋梅の季節になったら、そんな名所へと足を運んでみてはいかがでしょうか?
我が家の蝋梅に一言
毎年1か月以上もの間、きれいな花と甘い香りで楽しませてくれる我が家の蝋梅。常に放置していても、軽々とブロック塀を超える高さに育つたくましさの持ち主です。
そのため季節を問わず半分の高さまでバッサリと。それでも夏の間にぐんぐん伸びるためまた切り…。結局開花期には上半分は徒長枝状態、下半分だけ蝋梅らしく花盛りという姿になります。
それでもお隣さんちに迷惑はかけられません。これからもバッサリいくのでよろしくね。