エナガ【身近にいる鳥たち】

2022年6月5日

我が家から車で20分ほどの貯水池を回る遊歩道。木の枝を飛び回る尾羽の長いまるっとした小鳥たち。エナガです。体が小さいのにとても長い尾羽が目に映えます。そんなエナガについて気まぐれに調べてみました。

エナガってどんな鳥?

エナガの特徴

エナガの特徴をまとめると以下になります。

科目スズメ目エナガ科エナガ属
体長約13~14cm
尾の長さ約7~8cm
体重5.5~9.5g
翼開長
【翼を広げた長さ】
約16cm
体色・体型雌雄同色
・くちばしは約7mmと小さく黒い
・くちばしの付け根から先端の上面(嘴峰:しほう)は湾曲している
・首は短く体が丸い
・成鳥はまぶたが黄色
・額から頭上や頬、のど、胸、腹上部は白
・くちばしの付け根から眉、首の裏、翼、尾羽は黒い
・肩、下腹から尾の付け根は淡い赤紫色
・尾羽は6枚で内側3枚が黒、外側3枚は黒に白の模様が混じる
幼鳥の体色・成鳥で黒い部分がまだ淡い
・眉の黒部分は褐色味を帯びる
・頬は淡黄色・まぶたが赤い
・肩や下腹部分の赤紫色もほとんどない

エナガの名前の由来

エナガは全長の半分以上をその長い尾が占めます。そのため柄の長い柄杓(ひしゃく)に例えられました

江戸時代にはさまざまな呼ばれ方をしていた記録が残っています。

例えば「柄長柄杓(えながひしゃく)」や「柄長鳥(えながどり)」です。そこからエナガとなったことがわかります。また「柄柄杓(えびしゃく)」「尾長柄杓(おながひしゃく)」などの呼び名がありました。

エナガの鳴き声

さえずりのほか地鳴きや警戒発声もあります。

そんなエナガのさえずりからまずはどうぞ。

続いて地鳴きです。なお警戒がゆるむとこんな表情も見せてくれます。

エナガの移動の仕方

樹上性の鳥のため、滅多に下には降りてきません。地上に降りたときはホッピングと呼ばれる動き方をします。2本の足でピョンピョンと跳ねるように移動するのです。

そういうところはスズメとよく似ています。

エナガの生態

特徴

エナガの生態をまとめると以下になります。

分布日本では九州以北
分類留鳥または漂鳥【山地上部の個体群が降りてくる】
生息域平地や山地の近くの林・木の多い公園など
食性雑食
【小さな昆虫類・クモ類・木の実・草の種子・樹液など(好物はアブラムシ)】
性格・警戒心は強いが、ほかの鳥と群れを作ることも多い
・群れの縄張り意識が強く、ほかの群れとの縄張り争いは激しい
天敵猛禽類、モズ、カラス、イタチ、蛇など
寿命平均2~3年

エナガは亜種も含めると繁殖域の広い鳥

エナガはヨーロッパから中央アジア、日本まで広く分布する鳥です。分布域はユーラシア大陸の中緯度地方が中心になります。

日本のエナガ属は渡りをしないのが特徴です。

エナガは小さな群れを作って行動する

エナガは繁殖期も含め、十数羽ほどの小さな群れを作って行動します。繁殖期以外で作る群れには、シジュウカラやヤマガラ、ヒガラ、メジロ、コゲラなどの異なる種類の鳥が混ざることも珍しくありません

そんな混群の先導役はエナガです。ねぐらとなる木の枝に並列して体を寄せ合い集団で眠ります。その様子は「エナガ団子」とも呼ばれて親しまれてきました。

地鳴きで仲間を確認しながら雑木林の中を移動するエナガは、時として街路樹をねぐらにします。夕方から鳴き声による騒音とフン害が起こり問題になることもありますが、大目に見てあげたいものです。

エナガは一緒に行動する鳥ともめないの?

エナガは数種類の鳥と混群を作ります。そうすることで警戒力を高め、天敵に気付く確率を上げているとするのが一般的な説です。

混群に混ざる鳥とエナガとは比較的エサを取る環境が異なっています。そのためエサの取り合いは最小限で抑えられるのがメリットです。

もちろん完全になくせるわけではありませんが、それでも生き残る上では許容範囲内で収まります。

エナガは水浴びだけでなく雪浴びもする

鳥は寄生虫などを落とすために水浴びや砂浴びをします。

エナガはどうかというと水浴びを好んでする鳥です。地上に下りなくても水浴びができるよう、雨が降った後には葉っぱに付いた水滴まで利用します。雪の降る地方では粉雪で体を洗う様子も観察されていて、常に体をキレイに保つのに余念がありません。

エナガの繁殖

特徴

エナガの繁殖形態をまとめると以下になります。

繁殖期3~5月ごろ【営巣開始は2月ごろから・産卵は3~6月】
繁殖回数1回【失敗するとほかにヘルパーとして回る】
縄張りの広さ群れで300平方メートルほど
【群れの縄張り内で小さい縄張りを持って営巣する】
つがいの形態一夫一妻制
営巣場所樹木の枝や幹の股
巣の形・材料丸い袋状の巣
(横幅約8×10cm・縦約15cm・側面上部に直径約2.5cmの丸い出入口) 
材料
・外壁はクモの糸でコケを編む
・内側に羽毛や獣毛のクッション
巣作り担当つがい
抱卵担当主にメス【日中はメスが、夜はオスも抱卵することがある】
子育て担当つがい・ヘルパー(繁殖に失敗したつがい)
卵の数・特徴7~12個
・長径約15mm、短径約11mm
・にごった白色の地に淡紫色と淡赤褐色の微小斑
孵化までの日数12~14日【4月にはヒナが見られることもあり】
巣立つまでの日数約14~17日

エナガは動き始めが早い

エナガはまだ寒い2月ごろには群れの中で相手を見つけてつがいになる動き出しの早い鳥です。(求愛行動はこちら)

つがいが成立すると群れの縄張り内に小さな縄張りを持って巣を作り始めます。

巣は断熱効果を重視した構造になっていて、中には羽毛や獣毛を敷き詰めたフカフカの産座を作るのが特徴です。その見事な巣作りの様子から、別名「巧婦鳥(たくみどり)」とも呼ばれました。

一見すると木のコブにも見えるなど、天敵に見つかりにくいように作られています。

エナガの子育てにはヘルパーがつくことがある

エナガは繁殖中も常に天敵に狙われています。

2001~2004年に行われた調査では、178個の巣のうち31.5%の56個の巣が捕食者の襲撃で繁殖に失敗しました。最後まで無事にすんだのは51個の巣で、わずか28.7%にすぎなかったといいます。

では繁殖に失敗したつがいはどうするのかというと、ほかのつがいの子育てを手伝うヘルパーになるのです。

ヘルパーになるのはオスが多く、よその子育てを手伝うことで種の保存に努めています。

巣立った後のエナガのヒナは?

ヒナが巣立つといくつかの家族群が集まって群れで行動するようになります。動きが素早い小鳥のため、巣立ち後はほかの鳥よりも天敵に襲われにくいです。

一方で親から独立するまではまだエサをもらいながら生活します。親鳥を待つ間、ヒナは一か所に身を寄せ合って固まっているのです。

その様子もまた「エナガ団子」として親しまれてきました。特に複数の家族が集まった群れの場合は、特大エナガ団子になることもあります

ヒナが独立するにつれて日中にエナガ団子を作ることもなくなるので、観察したい場合は早めに出かけるのがおすすめです。エナガ団子の見つけ方はこちら

エナガの仲間

エナガは世界に20種類ほどの亜種がいる

エナガは亜種の多い鳥です。体の大きさや各部の羽の色の差などで20前後の亜種に分けられています。

日本にいるエナガは全部で4亜種

日本のエナガの中には分類でもめている亜種もいます。しかし基本的には4亜種が分布しているとされるのが一般的です。そんなエナガたちをご紹介します。

エナガ

日本で最も多いのがこのエナガです。本州・佐渡島・隠岐(おき)に生息しています。エナガの分類では南方系の亜種です。

シマエナガ(島柄長)

エナガの基本亜種の異名(シノニム)とも言われ、日本のエナガの中では唯一の北方系亜種です。北海道のみに生息し、頭部全体が白い特徴を持ちます。

別名「雪の妖精」と称され、わざわざ北海道まで会いに行く野鳥家も多い鳥です。

※シマエナガについて詳しくはこちら

キュウシュウエナガ

四国・九州に住むエナガの亜種です。胸に薄い黒斑があるとされますが、ほかとの違いは見た目ではわかりません。

チョウセンエナガ

朝鮮半島・対馬・壱岐(いき)にいるエナガです。その名のとおり日本ではほんの一部にしかいません。

実は日本にはもう1亜種のエナガがいる?

千葉県北西部を中心に、眉の黒い部分が薄いシマエナガに似た個体が見られることがあります。

本来千葉県は南方系の濃い眉をしたエナガの生息域です。そのためこのような個体は「チバエナガ」という通称で呼ばれます。

チバエナガはすでに江戸時代中期には知られていました。『観文禽譜』と呼ばれる鳥類研究書には「どろえなが」の名前で載っています。現在ではエナガの変異個体とも言われていますが、詳しいことはわかっていません

エナガは飼える?

エナガは研究目的など特定の条件がないと飼えない

その愛らしい姿に人気の高い鳥ですが、エナガは多くの鳥と同じく「捕獲」も「保護」も原則禁止されています。研究目的など特別な許可を得た場合のみ飼育が可能です。

もし怪我したエナガを見つけた場合は、木の枝の上などに移動してあげるのが精いっぱいと覚えておきましょう。それでも何とかしてあげたいと思った場合は、各自治体に担当部署があるため連絡を入れて指示をあおぐ方法もあります。もしそれでだめだった場合はかわいそうですが諦めるしかありません。

もしエナガを家に連れ帰った場合はどうなる?

無許可で捕獲・保護した場合は鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)に違反することになります。最悪の場合「禁固1年以下、100万円以下の罰金」となるため要注意です。理不尽に感じるかもしれませんが、自然の生き物は自然の掟の中で生きるのが正しいとしか言いようがありません。元気になってくれるのを祈るしかできないのです。

エナガは所によっては要保護生物

東京都では純絶滅危惧種の指定を受けるほど数が減っている鳥です。

そのほかの都道府県では数は安定していますが、だからと言って捕まえていいというわけではありません。

あくまで見守るだけにしましょう。

※参考データ:日本のレッドデータ

かわいいエナガの癒し動画

エナガのお食事風景

木の枝をちょんちょんつつきながらお食事している様子をこちらでどうぞ。

エナガの水浴び風景

身だしなみはとっても大切。エナガの大好きな水浴びの様子をこちらでどうぞ。

エナガ団子はいかがですか?

おしくらまんじゅうしているかのようなかわいいエナガ団子。でもちょっと多すぎ?なエナガ団子はこちらでどうぞ。

運が良ければこんなことも?

エナガの大群にびっくり!大きな群れの様子はこちらでどうぞ。

枝の間をちょこちょこと

遊歩道を散歩していると、エナガが頭上の枝から枝へちょこちょこと。丸いボールに長いしっぽが付いたようなかわいらしい姿はとても印象的です。

しかも基本的にいつも集団なので見ていて飽きません。

これからもかわいらしい姿を見せ続けてね。

鳥・動物漂鳥,留鳥,野鳥

Posted by koroton