ヒガンバナ(彼岸花)【庭の草木や花々】

2022年7月20日

毎年決まった季節になると庭に咲く花があります。ヒガンバナです。我が家のヒガンバナはクリーム色の白花品種ですが、それでも花が大きいこともあり、なかなか目立つ存在といえます。そんな独特な花ヒガンバナについて気まぐれに調べてみました。

目次

ヒガンバナ(彼岸花)ってどんな植物?

ヒガンバナの基本情報

園芸分類球根・草花
形態多年草
原産地中国
20~50cm
開花期7~10月ごろ
花色赤・白・黄・オレンジ・ピンク・青・紫・複色
耐寒性強い
耐暑性強い

ヒガンバナの特徴

ヒガンバナ(彼岸花・石蒜)はヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物で、学名はLycoris radiataといいます。学名はそのまま別名の1つとして使われ、リコリス・ラジアータとも呼ばれる植物です。

日本から見たヒガンバナは中国から渡ってきた帰化植物に当たります。正式な記録には残っていないため、史前帰化植物と呼ばれる植物に該当すると考えられる植物です。

中国が原産と考えられる理由は、日本のヒガンバナの染色体は3倍体で実が実らない特徴を持つことに由来します。一方の中国のヒガンバナは2倍体のものがあり、実を実らせるのが日本のヒガンバナとの大きな違いです。

これらの違いから日本のヒガンバナは自然に広がったものではなく、人の手により広がったと考えられます。9月の秋のお彼岸の頃、花茎を伸ばして花弁が強くそり返った花を咲かせるのが大きな特徴です。花が終わると葉を伸ばし翌年の夏に枯れるという、ほかの多年草と異なる特徴を持ち合わせます

ヒガンバナの別名

学名の属名に当たるLycoris(リコリス)とは、ギリシャ神話の女神にして海の精ネレイドの1人・リュコーリアスが由来です。一方のradiata (ラジアータ)は放射状を意味し、開花時の様子にちなんで付けられたことがわかります。

では日本ではどうでしょうか。

日本のヒガンバナ(彼岸花)の名前の由来は秋のお彼岸の頃に咲くことのほかに、食べると後は「彼岸(死)」しかないから付いたとする説もあります。

別名の代表格である曼殊沙華(まんじゅしゃげ・まんじゅさげ・かんじゅしゃか)はサンスクリット語(梵語)で「赤い花」「葉に先立って赤い花を咲かせる」という意味です。

曼殊沙華は特別な花でもあります。釈迦が法華経を説法した際に、天から四華と呼ばれる四つの花が祝いの意味を込めて降ったとされ、その1つがこの花だったとされているのです。

しかし花の姿そのものは不明なこともまた事実。「赤団華」の漢訳から色は赤い花と想像できます。ヒガンバナが本当にこの四華の一つかはともかく、曼殊沙華には天上の花という意味もあるのです。

ちなみに日本にはヒガンバナの別名は各地方でしか通じないものも多く、その数は数百から1000種以上あるともいわれています。

葬式花(そうしきばな)・墓花(はかばな)・死人花(しびとばな)・地獄花(じごくばな)・幽霊花(ゆうれいばな)・灯籠花(とうろうばな)などは「彼岸」、つまりはあの世のイメージからついたと思われる別名です。

そのほかにも剃刀花(かみそりばな)・狐花(きつねばな)・捨子花(すてごばな)・毒花(どくばな)・雷花(かみなりばな)・痺れ花(しびればな)・火事花(かじばな)・蛇花(へびのはな)・天蓋花(てんがいばな)・狐の松明(きつねのたいまつ)・葉見ず花見ず(はみずはなみず)など、特徴からくるものもかなりあります。

ヒガンバナを英語で言うと?

英語でもその見た目からいくつもの名前があります。レッドスパイダーリリー(red spider lily)・ハリケーンリリー(hurricane lily)・マジックリリー(magic lily)などです。

ただしヒガンバナも赤一色というわけではないため、単にスパイダーリリーと呼ばれることもあります。

ヒガンバナの花言葉は?

ヒガンバナは墓地でもよく見られることから、「悲しい思い出」という花言葉があります。そのほかにも多くの花言葉があり、「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「転生」「思うはあなた一人」「また会う日を楽しみに」と悪いものばかりでもありません

また色でも分かれます。

  • 赤:情熱・独立・再会・あきらめ・悲しい思い出・思うはあなた一人・また会う日を楽しみに
  • 白:思うはあなた一人・また会う日を楽しみに
  • 黄:追想・深い思いやりの心・悲しい思い出・陽気・元気
  • ピンク:快い楽しさ
  • オレンジ:妖艶

通常は贈り物に使われることのない花ですが、覚えておいて損はありません。

ヒガンバナの品種

シロバナマンジュシャゲ(シロバナヒガンバナ)

ヒガンバナとショウキズイセンの交雑種とされ、九州南部を中心に自生も見られる品種です。花は必ずしも真っ白というわけではなく、ピンクや黄色味がかった筋が入るものもあります。開花時期は9月で、花の後に葉が出てくる秋出葉型タイプです。

ショウキズイセン(鍾馗水仙:リコリス・オーレア)

黄色くて鮮やかな花色をした品種です。花は1茎に5~10輪、開花時期は10月と遅めですが、花も葉も大きいためにとても豪華な印象を与えます。耐寒性にやや難があるため、自生地は四国や九州といった南部です。

キツネノカミソリ

7月の中旬以降に花を咲かせる早咲きの品種です。オレンジ色で花弁はヒガンバナほど反り返りません。毒性が強く、素手で触れると炎症も起こすことがある危険な花です。大型のオオキツネノカミソリもあります。

ナツズイセン

名前からもわかるように、夏の暑い時期、8月中旬以降に花を咲かせる品種です。花の色は青みがかったピンク色で独特の美しさがあります。ヒガンバナと違い、葉が枯れた後に花が咲くのが特徴です。

そのほかに青い花を咲かせる品種も

日本のヒガンバナは染色体が3倍体のため種を付けません。しかしごくまれに2倍体の個体ができることがあり、日本のヒガンバナでも見つかっています。

コヒガンバナなどが代表的なもので、日本でも園芸品種が作られるときの交配に使われてきました。実際に日本でも多くの品種が作られています。中には青い花を咲かせる品種もあるので、好みの品種を探してみるのも楽しいです。

【通常の赤い彼岸花はこちら

ヒガンバナの育て方

日当たり

日当たりのよい場所を好みますが、明るい半日陰くらいなら栽培できます。ただし葉が出ている冬の時期は、球根の充実のためにも日がよく当たる方が望ましいです。

鉢植えの場合は開花後に明るい日陰に移動すると、花もちがよくなります。葉が茂ってきたら日当たりのよい場所に移動してください。

ヒガンバナの土は、鉢植えにする場合は市販の培養土で充分です。元肥も入っているのでそのまま使うとよいでしょう。

地植えにする場合は腐葉土を混ぜて水はけをよくすると同時に、緩効性肥料を混ぜて元肥にします。

植え付け

ヒガンバナの植え付けに適した時期は6~8月いっぱいまでです。夏に入るころになると、ホームセンターや園芸店で球根が売られるようになります。

球根選びのポイントは、ずっしりと重みがありまだ発芽していないものを選ぶことです。特に開花後の植え替えは嫌うので、芽が出る前のものを植え付けましょう。

すでに庭にある場合、地植えから鉢植えにしたいときは球根を掘り上げ、小さい球根は再び地植えに、大きい球根は鉢に寄せ植えにすると見事に咲きます。

鉢植えの場合の植え付け方

ヒガンバナを鉢植えにするときは、深めの4~5号に3~4球を目安に植え付けましょう。市販の培養土を使えば、元肥も入っているので手間がかかりません。

鉢底にネット鉢底石を敷いたら土を鉢の2/3ほど入れます。花が咲いたときの見栄えを優先するなら、株間を開けずに球根のとがった方を上にして植え付けてください。球根を充実させるなら株間は5cmほどあけます

球根の頭が少し出るくらいまで土を入れ、水やりをすれば鉢への植え付けは完了です。

地植えの場合の植え付け方

ヒガンバナを地植えにするときは、掘り起こした土に元肥として3割ほど腐葉土を混ぜ込みます。土を掘った穴に戻したら、球根の高さ1つ分の植え穴か溝を掘ってください。

球根の株間は大体球根の幅2つ分、15~20cmほどあけておくと、球根が充実して翌年はよりよく咲きます。

球根を並べ終わったら土をかぶせ、水やりをしたら完了です。

水やり

鉢植えの場合は土が乾いたらたっぷりと水やりをします。地植えの場合は雨があまりにも降らないようなら水をやるくらいで充分です。

地上部が枯れて休眠に入ったら、鉢植えも地植えも水やりは必要ありません。

肥料

ヒガンバナは鉢植えの場合は毎年植え替えるため、元肥だけで肥料は十分です。地植えの場合は必要ありません。もし花色をよくしたいのであれば、葉が茂っている冬の時期に鉢植えであれば緩効性化成肥料を少量、地植えであれば堆肥や腐葉土をすき込んで球根を充実させてください

植え替え

鉢植えの場合には毎年1回植え替えをしましょう。植え替え時期は植え付けと同じ6~8月いっぱいまでです。必ず芽が出る前に植え替えをすませてください。

地植えの場合は植え替えの必要は基本的にありません。しかし増えすぎて球根の間隔が詰まりすぎた場合や、風通しが悪くなってしまった場合は掘り上げます。球根の整理をして植え付けし直してください。掘り上げ方は葉の生え際から15cmほど離れた場所に垂直にスコップを差し込みます。後はテコの原理で掘り上げれば大丈夫です。掘り上げた球根は乾燥しないように注意し、濡れた新聞紙などで保護します。

増やし方

ヒガンバナは通常種を付けないため分球で増やします。球根を掘り上げたときに、子球を手で割るようにして分離してください。

子球は大きさにもよりますが、小さいものは花を咲かせるまでに2~3年ほどかかることもあります。早く花を咲かせるポイントは、いかに早く球根を充実させるかです。

コツは株間を20cm以上あけて植え付ける、葉が枯れるまでは掘り上げない、日当たりのいい場所で育てる、この3つを守ってください。ただし地植えの場合は増えすぎることもあるので要注意です。

病害虫

基本的には困ることはありませんが、水はけが悪いと軟腐病にかかることがあります。水はけのよい場所を選んで植え付ければ大丈夫です。

ヒガンバナには毒がある

ヒガンバナにはどんな毒がある?

ヒガンバナは特に鱗茎に毒性の強いアルカロイドを約1%含んでいます。アルカロイドの内訳としては、リコリンが50%のほか、ガランタミン、セキサニン、ホモリコリンなど約20種類です。リコリンはその名のとおりヒガンバナの学名であるリコリスに由来します。口に入れるとよだれや吐き気、腹痛と共に下痢を起こし、重度の中毒になると中枢神経がマヒすることもあるのです。最悪の場合は死ぬこともあるため、軽視できない毒性を持ちます。

ヒガンバナの毒の致死量は?

人の場合、リコリンの致死量は10gとされています。ヒガンバナの球根1gあたりのリコリンの含有量は約0.15mgなので、致死量分のリコリンを摂取するには球根約670個分。ちょっとかじったぐらいなら死ぬ心配はまずありません。

しかし中毒症状は激しいものなので、誤って口にした場合はすぐに医師の診断を受けてください。特に注意したいのは子供です。興味本位で口にしないように、特に植え付けや植え替えのときは目を離さないでください。あらかじめ注意しておくのを忘れないようにしましょう。

ヒガンバナの毒は昔から利用されてきた?

ヒガンバナは虫除けやモグラなどの害獣除けとして、お墓や田んぼの畔に植えられてきました。モグラは本来肉食のため、植物のヒガンバナは効果がないように思えます。しかしエサのミミズがヒガンバナを嫌うためにモグラが来ないといわれてきたのです。

お墓はかつては土葬だったため、故人を守るためにヒガンバナを植えたとされます。

ヒガンバナは飢饉のときには食べられていた?

ヒガンバナの毒成分であるリコリンは水溶性です。そのため飢饉のときにはすり潰して水に何度もさらしてデンプンを取り、食料にしていたとされています。

しかしどの程度水にさらせば無毒化できるのかその定説は見当たらないといわれ、やはりむやみと口にしない方がよいでしょう。

また石蒜(せきせん)という名の生薬としても知られ、湿布薬として使えるとされるものの、知識のない一般人が使うには危険なことも事実です。

一方で毒成分の1つのガランタミンはアルツハイマー病の治療薬としても利用され、ヒガンバナは薬用植物としての面も持っています。

ヒガンバナは縁起の悪い花?

実際に問題は起こらないけど迷信も多い

ヒガンバナはその毒性からか昔から迷信の多い花でもありました。「家に持ち帰ると火事になる」「花を摘むと死人が出る」「花を摘むと手が腐る」などです。

また墓地に植えられることが多い花だったこともイメージを悪くしています。

ヒガンバナに迷信が多い理由

理由はいくつか考えられますが、まずはその毒性から特に子供に怖いというイメージを植え付けるためといわれています。不吉な迷信を言い聞かせることで子供が近寄らないようにしたと考えられるのです。

またヒガンバナの毒性を使って、土葬した故人の遺体が害獣などに食べられるのを防いでいたこともイメージを悪くしています。お墓に咲く花というどこか陰湿なイメージが定着してしまっているのです。

ヒガンバナは風水的には避けるべき花

ヒガンバナの悪いイメージや言い伝えは迷信です。それでも風水的にはヒガンバナを庭や家に持ち込むのは悪いこととなっています。

理由は「成仏していない霊を招き寄せるから」です。そのため風水的にはヒガンバナを植えるのも鉢植えを持ち込むのも、もちろん切り花を持ち込むのもやってはいけないことになります。

風水にこだわるのであれば覚えておきたいことです。

ヒガンバナの名所

【宮城県大崎市】羽黒山公園

千石城(せんごくじょう)の跡地である高台にある公園で、丘一面を埋め尽くすヒガンバナの群生地は見事です。まさに赤いじゅうたんを敷き詰めたようで、県内随一といわれる圧倒的な美しさを楽しめます。

羽黒山公園(大崎市)

【埼玉県幸手市】権現堂公園(ごんげんどうこうえん)

公園を会場に毎年「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)まつり」が開催され、土手一面に約500万本ものヒガンバナが咲く群生地を楽しめます。見応え抜群のイベントに癒されに行ってみてはいかがでしょう。

県営権現堂公園HP

【埼玉県日高市】巾着田(きんちゃくだ)

高麗川(こまがわ)に囲まれたヒガンバナの群生地といえばここという有名スポットです。約500万本のヒガンバナがあたり一帯を真っ赤に染め上げる様は圧巻といえます。

「巾着田曼殊沙華まつり」はヒガンバナ祭りでも日本最大級のフェスティバルです。季節には足を運んでみてはいかがでしょうか。

日高巾着田公式HP

【奈良県宇陀市】仏隆寺(佛隆寺:ぶつりゅうじ)

仏隆寺は嘉祥3年(850年)創建とされる古刹です。樹齢約900年の山桜が門前に生え、いたるところでヒガンバナがその美しさを競います。

本堂に続く参道の石段の両脇はヒガンバナの群生地となっていて、原風景の中で風情ある景色を堪能できるおすすめのスポットです。

奈良県観光公式サイト・佛隆寺(仏隆寺)

【大分県竹田市】七ツ森古墳(ななつもりこふん)

わずか600坪の広さに約20万本のヒガンバナが咲き誇る、西日本有数の群生地です。「七ツ森彼岸花祭り」が開催され、神楽などの奉納も見応えがあります。

大分県観光情報公式サイト

ヒガンバナは名前のとおり彼岸時期に咲く花

文字通り放りっぱなしの我が家のヒガンバナ。それでも時期が来れば忘れずに見事な花を見せてくれます。葉が枯れた後を見るとぎゅうぎゅうになった球根たちが。そろそろ植え替えと球根の選別をしてあげないとね。

花・植物,育て方,草花

Posted by koroton