シジュウカラ【身近にいる鳥たち】

子供のころの定番のなぞなぞに、「いつも巣をあけっぱなしの鳥は何?」というのがありました。答えは「始終空(しじゅうから)」で「シジュウカラ」となり、どんな鳥かどうか関係なく名前を覚えたものです。そんなシジュウカラについて気まぐれに調べてみました。

 

シジュウカラってどんな鳥?

特徴

シジュウカラの特徴をまとめると以下になります。

科目 スズメ目シジュウカラ科シジュウカラ属
体長 13~16.5cm
体重 11~20g
翼開長

【翼を広げた長さ】

約22cm
体色 雌雄ほぼ同色

・頭から首周りは黒

・頬は白く、後ろ首にも白い斑紋がある

・背中は緑がかった灰褐色

・尾にかけて青みがかった灰色や黒褐色

・喉から尾の付け根にかけて黒い帯があり、オスのほうが太い

・翼と尾は灰黒色で、翼の風切り羽の基部を覆う大雨覆(おおあまおおい)の先端が白い

・羽を閉じると大雨覆が白い筋模様に見える

・体の下面は淡褐色

・くちばしは黒く、足は灰色がかった短黒色

シジュウカラを表す学名(種小名)はminorといいます。これは「小さな」という意味です。しかしシジュウカラはシジュウカラ科の中では大型種になります。

 

名前の由来

シジュウカラの名前の由来は、鳴き声でも普段使われる地鳴きが「ジジジッ」と表現され、そこから「しじう」となったとされています。「カラ」は鳥を意味する言葉で、合わせて「しじうから」が変化して「シジュウカラ」となりました。

ただし平安時代には「シジウカラメ」と呼ばれ、「シジウカラ」になったのは室町時代に略されてからです。

「シジュウカラ」の漢字である「四十雀」の「四十」は、「シジウ」の音に当てたものと考えられます。

似た名前を持つ鳥に「ゴジュウカラ」がいますが、こちらはシジュウカラに似ていることからついた名前です。ゴジュウカラのほうが後から来たため、シジュウカラの名前や当て字に直接影響はないものとされます。

 

シジュウカラの鳴き声

シジュウカラのさえずりからまずはどうぞ。

シジュウカラの地鳴きはこうです。

 

鳴き声とその意味

シジュウカラはとてもよく通る甲高い声でさえずります。双眼鏡で見えないようなところからでも聞こえてくるほどの声量です。

「ツーピツーピ」「ツィピーツィピー」「チュチュパーチュチュパー」「ツーピピッ」「ジュクジュク」などのさえずりのほかにも、「チカチカ」「ジャージャー」といった複雑な地鳴きも使い分けています。

実はシジュウカラは2020年の時点で何十種類もの鳴き声を使い分けるだけでなく、さまざまに組み合わせることで仲間や家族に複雑な情報を伝えていることがわかったのです。推定20以上の単語を持ち、組み合わせパターンは175以上もの文章を駆使していると見られると発表されました。

例えば雛(ヒナ)への危険を伝えるときに、どんな敵が迫っているのかを鳴き声を使い分けることで雛に伝えていることがわかりました。

もしハシブトガラスが迫ると、「チカチカ」と親鳥は鳴きます。すると雛は姿勢を低くしてカラスのくちばしが届かないようにしたのです。またアオダイショウが迫ると親鳥は「ジャージャー」と鳴き、雛たちは一斉に巣から脱出しました。

 

仲間とのコミュニケーションも

シジュウカラは子育てが終わった後には仲間と群れをつくります。仲間からはぐれたときやえさを見つけたときには「ヂヂヂヂ」と鳴き、仲間を呼び寄せるのに使われる鳴き声であることがわかりました。

ほかにも猛禽類が上空に現れると「スィー」と鳴き、仲間は藪に逃げ込み身を伏せます。天敵が迫ると「ピーツピ」と警戒するよう呼び掛け、仲間たちは周囲を確認する様子が見られました。

このような行動はただ危険が迫っていると反射的に警戒するのではなく、どんな危険が迫っているのか合図の意味をきちんとイメージした上で理解していることが判明しています

 

文法も持つ

これまで人間しかやっていないとされることも、シジュウカラたちはやっていることが分かりました。鳴き声を決まった順序に並べて様々な意味を作る、文法法則による言語能力を持つことがわかったのです。

つまりシジュウカラは単語を決まった法則で組み合わせることで、人間と同様に文を作ってコミュニケーションを取っています。

 

シジュウカラの生態

特徴

シジュウカラの生態をまとめると以下になります。

分布 ・アムール川流域から朝鮮半島

・長江流域・四川省にかけて

・日本(北海道・本州・四国・九州・壱岐・隠岐・対馬・伊豆諸島・五島列島・佐渡島)

・サハリン

分類 留鳥(寒冷地や食料が少ないときは渡ることもある)
生息域 市街地の公園・庭などの平地や標高の低い山地の林・湿原など
食性 雑食(果実・種子・昆虫・クモなど)
性格 慎重な性格だが、人に慣れやすく物怖じしない
天敵 カラス・タカなどの猛禽類・ヘビ・猫など
寿命 1年半~2年ほど

日本には4亜種が留鳥として生息しています。

 

シジュウカラの繁殖

特徴

シジュウカラの繫殖形態をまとめると以下になります。

繁殖期 3~7月(産卵期は4~7月)
繁殖回数 年1~3回(基本は1~2回)
縄張りの広さ 1ha(100m×100m)
つがいの形態 一夫一妻制

・9割が同じつがいを保つといわれる反面、一夫二妻も確認されている

営巣場所 樹洞、巣箱など
巣の形状・材料 ・形状は椀状

・コケ類を土台に敷き、その上に動物の毛や毛糸など繊維類をほぐしたもの、細く裂いた枝や葉を敷く

巣作り担当 メス

・ほとんど1日で作り上げる

抱卵担当 メス
子育て担当 つがい
卵の数・特徴 ・4~12個(通常8~10個)

・2回目は7個前後と減る

・大きさは1.55~1.85cm×1.25~1.40cm

・白色に小さな赤褐色や灰色の斑点

孵化までの日数 ・抱卵から13~14日

・孵化をそろえるため全部生み終えてから抱卵

・すべての卵をまんべんなく温めるためにメスは巣の中で向きを変えながら温める

巣立つまでの日数 ・孵化から18~20日で巣立ち

・巣立ち後2週間~1か月は親鳥と一緒

 

求愛行動

シジュウカラは繁殖が近くなると「求愛給餌(きゅうあいきゅうじ)」を行うようになります。これはメスが雛のように鳴きながらオスにエサをおねだりする行動です。わざわざ翼もばたつかせて甘えるポーズもとってみせます。その様子はこちら

メスを誘うためのさえずりも20種類をこえるといわれ、バリエーションが豊富なオスほどメスに選ばれやすいというのが通説です。

もちろん求愛行動もとります。その様子はこちら

 

子育て

雛へのエサやりはオスとメス共同で行います。生まれたばかりの雛はほぼ丸裸で目も明いていません。孵化して3日後くらいから産毛が生え始めますが、まだ鳴き声も小さくかすかに巣箱の外に漏れるくらいです。そのため夜はメスが雛を抱いて寝ます。

そんな雛ですが、親鳥からエサをもらうとフンをするのです。フンはゼリー状の物質に包まれているため、くわえやすくなっています。巣箱の中に残すと衛生面や天敵を呼び寄せるなど問題があるため、親鳥は加えて外で処分するのです。

孵化から10日もすると雛の目も開いて羽も生えそろい、鳴き声もはっきりと外に聞こえてくるほど大きくなります。親鳥がエサを運ぶ頻度も多くなり、巣立ち間際は10分に1回くらいは運んでくるというのです。

親鳥はエサを運んできても巣には直行しません。近くにとまって巣箱に呼び掛け、安全を確認してから入っていきます。エサを加えながらでも鳴けるのはなかなか器用です。

巣立ちは親鳥がエサを持って外から雛たちに呼びかけます。全部のヒナが巣立つまでに数時間かかりますが、雛は巣立つ時にフンをして少しでも体を軽くしてから巣立つのです。

また全体で見ると巣立つまでには数時間かかりますが、外敵に襲われないよう、1羽あたりは30分ほどで巣箱から飛び出していきます。

そんなシジュウカラの子育ての様子はこちら

 

シジュウカラは大食漢?

シジュウカラは特に子育てのときには虫を中心に食べます。子供へのエサも栄養豊富な虫です。

シジュウカラは非常に大食漢な鳥とされ、1年間に食べる虫の量をガの幼虫に換算すると12万5千匹にもなるというドイツの研究結果もあります。

日本での研究も有名です。アメリカシロヒトリというあの桜やクワによくつく白い毛虫で行った実験では、4287個の卵から成虫になれたものはわずか7匹だけ。あとは全て食べられてしまったといいます。

 

雛(ヒナ)を見つけたら?

 

雛を見つけたときに、多くの人が巣から落ちたと思うことでしょう。しかし通常は巣立ったばかりの雛であり、親が近くで見守っています

雛は巣立った後に親から飛び方や餌の取り方など、生きていくうえで必要なことを学んでいる最中です。そこで勘違いから保護することは、親から雛を引き離すことになってしまいます

ではどうしたらよいかというと、まずは地上にいた場合は木の枝にとまらせてすぐに離れるのがベストです。人が近くにいては親鳥が近寄れません。外敵に襲われないか心配ならば、カップ麺などの容器の底に雨対策の水抜きの穴をあけ、ひもなどで木の枝に吊るすのもありです。

実際保護しても人が親鳥の代わりをするのはまず不可能といえます。こまめなエサやりから外敵からの身の守り方、シジュウカラならではの複雑なコミュニケーションなどは、人間には教えられません。まず死んでしまうことが多いのです。

ましてや羽毛も生えていない雛が落ちていたときはなおさらそのまま離れましょう。かわいそうに感じるかもしれませんが、小さく弱い雛や病気にかかったヒナを親鳥があえて落とすこともあるのです。自然の掟と思い、手を出さないことも大切なことと覚えておきましょう。

 

雛の保護には許可が必要

シジュウカラも「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)」で守られています。そのため例え保護でも家に連れ帰るなら許可が必要です。そのためもしどうしても心配ならば、自治体に連絡してみましょう。担当部署があるはずです。

大切なことは納得できなくても担当部署の指示に従ってください。違法行為で罰せられる可能性すらあります。かわいそうと思うような指示でも、「野生動物は野生の中でこそ生きるべき」という理念の元で制定された法律です。自然に任せることも大切なことを意識してください。

 

シジュウカラ用に巣箱を設置してみよう

どんな巣箱が適してる?

シジュウカラに適した巣箱は、さまざまな場所で市販されています。作ってもよいですが、巣穴の大きさは27mmにしてください。30mmにしてしまうとスズメにのっとられたり、ヒナが襲われたりします。

市販品はシジュウカラなどの小鳥用に巣穴の大きさが27㎜前後のものが多いので、選択肢も多いです。デザインにこだわってもよいですが、シンプルなものの方が目立ちすぎないのでよいでしょう。

巣箱をかけるのは、繁殖期に間に合わせるためにも秋~冬がおすすめです。春でもシジュウカラは年に2回巣作りするので、遅いわけではないのでかけてあげましょう。

 

巣箱のかけ方

巣箱をかける場所は、風通しがよく湿度の低い場所がおすすめです。外敵が寄り付かない少し人通りがあるところを好みます。そのため玄関先などでも利用してくれることがあるので、近くで観察したい場合にはおすすめです。

木に付ける場合は下枝が少なくまっすぐで、地上から2m以上の場所に取り付けてください。下枝が多い木だと、天敵の蛇が寄り付きやすくなります。

雨や直射日光を避けるため、入り口はやや下に向けて取り付けるのがコツです。木を傷めないようにシュロ縄や麻ひもでくくりつけます。

 

雛が巣立った後は?

雛が巣立った後の巣は、必ず中を掃除してきれいな状態に戻してください。使ったまま放置していると、翌年には営巣してくれません。中の巣材を取り除き、きれいに洗って清潔な状態に戻してあげましょう。

注意点としては、冬に巣箱の掃除をしようとすると、アシナガバチの越冬場所に使われていることがある点です。ハチはそのまま放置しても大丈夫ですが、掃除のときに刺される心配があります。雛が巣立って動きが見られなくなったら、すぐに掃除をすると安心です。

 

シジュウカラの仲間

日本には4亜種が生息する

シジュウカラの仲間は日本には4亜種が生息しています。いわゆるシジュウカラのほかに、奄美大島と同じ奄美群島にある徳之島に住むアマミシジュウカラ、石垣島や西表島に住むイシガキシジュウカラ、沖縄島と慶良間諸島の座間味島、沖縄島近くの屋我地島(やがじしま)に住むオキナワシジュウカラの4種です。

ただしシジュウカラ自体はかつてヨーロッパシジュウカラの亜種とされ、近年独立種とされたこともあり、まだ一般的に普及していない部分もあります。また独立を認めない機関もあるなど、シジュウカラはまだ分類にもめている状況です。

 

シジュウカラのこんな動画はいかが?

まずはお食事の様子でも。

水浴びも気持ちよさそう。

はじめは牽制で様子見?最後は取っ組み合いのけんかになりました。

 

いつまでも身近でさえずっていて欲しい鳥

やや地味に見えるかもしれないけれどおしゃれで、さえずり声も心地よい鳥がシジュウカラではないでしょうか。スズメよりも野鳥観察によいともいわれ、巣箱をよく利用することから動画も多い鳥です。自然に親しむのにもちょうどよいシジュウカラ。いつまでも身近で見られる環境を残したいものです。

 

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Posted by koroton