カワラヒワ【身近にいる鳥たち】
庭にくる子鳥の中にスズメによく似た、でもよく見るとはっきり違う子たちがいます。翼におしゃれな黄色い差し色。カワラヒワです。身近にいるのにスズメたちより知られていないように感じるのは私だけでしょうか。そんなカワラヒワについて気まぐれに調べてみました。
カワラヒワってどんな鳥?
カワラヒワの特徴
カワラヒワの特徴をまとめると以下になります。
科目 | スズメ目アトリ科 |
体長 | 14~16cm |
体重 | 17~30g |
翼開長 【翼を広げた長さ】 | 約24cm |
体色 | 雌雄ほぼ同色 ・太く円錐形をしたくちばしと脚は薄いピンク(肌色) ・風切り羽は黒っぽいが、翼角と初列及び次列の根元が黄色 ・三列風切りはやや淡褐色 ・尾羽は黒っぽく先は中央が内側に切れ込む凹尾 オス ・頭部から胸はオリーブ褐色 ・目の周囲からくちばし付け根が黒っぽい ・背中と体下面は茶褐色 メス ・オスより全体的に色が淡くぼやけている ・頭部は灰色味が強い |
カワラヒワの名前の由来
カワラヒワは漢字で書くと「河原鶸」です。その名のとおり河原に群れて、ヒエやアワを食べていたことが由来になっています。ちなみにヒワとは「細くてたおやかな弱々しい鳥」という意味です。そのためヒワという鳥そのものは存在していません。現在ではスズメ目アトリ科ヒワ亜科の総称とされています。ではカワラヒワの英名はなんというのかというと、「Oriental Greenfinch」です。東洋にいる緑色のアトリ類を意味します。カワラヒワの学名も英名と同様です。カワラヒワの学名は「Chloris sinica」といい、sinicaは支那(中国)を意味しています。
カワラヒワの鳴き声
地鳴きは「キリリ」や「コロロ」と表現され、メジロの鳴き声にも似ています。しかしメジロよりも声量があること、鳴き声が太いことから聞き分けは可能です。繁殖期になるとさらに「チョンチョンチョン」「ビィービィー」という声も組みあわせてさえずるように。
人によってさえずりは「チョンチョンジューイン」などとも表現され、後半の「ジューイン」の部分はセンダイムシクイのさえずりの一部と似ています。全体を聞き比べれば明確に違いますが、ややこしいのも事実です。
カワラヒワの地鳴き
カワラヒワのさえずり
カワラヒワの移動の仕方
カワラヒワはスズメと同じで地面ではホッピングで移動します。ホッピングとはピョンピョンと飛び跳ねる移動方法です。群れでピョンピョン飛び跳ねながら移動する様は、人によっては地面がもぞもぞと動いているように見えるとか。
カワラヒワに似た鳥
カワラヒワは比較的地味な鳥に見られるためかよくスズメとも間違えられます。しかしスズメとカワラヒワではいくつも違いがあるので慣れれば見分けは簡単です。
まずスズメにはカワラヒワのような黄色い差し色はありません。
さらに尾羽の形にもはっきりとした違いがあります。まずスズメは尾羽の先はほぼ四角です。それに対してカワラヒワの尾羽の先は、少し内に切れ込んだ凹型をしています。
木に留まるときにも明確な違いが。スズメは特に意識したような姿勢はとりません。一方のカワラヒワは体を起こして直立したような姿勢を取ることが多いです。
このようにスズメとよく混同されているであろうカワラヒワには、スズメとは異なる個性がいっぱいあります。
またマヒワともよく似ていると混同されることが。マヒワはカワラヒワより小柄で体の黄色味がずっと強く、色合いも明るいのが特徴です。さらにオスなら翼の下や尾の付け根などに、メスならお腹全体に黒い縦班があります。
似ているといわれる鳥でも意外と違いがあるのでよく観察してみてください。
こちらがカワラヒワ
こちらがスズメ
こちらがマヒワ
カワラヒワの生態
特徴
カワラヒワの生態をまとめると以下になります。
分布(世界) | 中国・モンゴル・ロシア南東部・朝鮮半島・日本 |
分布(日本国内) | 北海道・本州・四国・九州・沖縄 |
分類 | 北海道は夏鳥、沖縄は数が少なく冬鳥、地域によって漂鳥 |
生息域 | 低地の森林、河原、農耕地、公園、市街地 |
食性 | 主に植物食(稀に昆虫を食べることもある) |
性格 | 警戒心が強い |
天敵 | タカなどの猛禽類 |
寿命 | ・野性下では2~3年といわれている ・飼育下では上野動物園で9年4か月という記録がある※ |
カワラヒワは基本ベジタリアン
小鳥でも多くは繁殖期となると昆虫を食べ、ヒナにも動物食を与えます。しかしカワラヒワの場合は滅多に昆虫を口にしないベジタリアンです。ヒナにも植物の種などを与えます。そのためカワラヒワは口と胃の間に一時的に食べ物を蓄えるための器官があるのが特徴です。そのうと呼ばれるもので、主に植物を食べる鳥によく見られます。ヒナに与える餌もこのそのうにため込んだものです。だ液を混ぜて柔らかくしてから与えます。
カワラヒワの繁殖
特徴
カワラヒワの繁殖形態をまとめると以下になります。
繁殖期 | 3~7月 |
縄張りの広さ | 巣の周辺直径30cmほど |
つがいの形態 | 一夫一婦制 |
営巣場所 | 樹上や建物の隙間など地上から3~7mのところ |
巣の形・材料 | 枯れ草や木の皮、鳥の羽、ビニールひもなどを使った椀状の巣 |
子育て担当 | つがい |
卵の数・特徴 | 数は3~5個・大きさは約19×14mmで乳白色に褐色の斑紋 |
孵化までの日数 | 11~13日 |
巣立つまでの日数 | 約14日(巣立ち後7~10日で独立) |
カワラヒワの求愛行動
カワラヒワの恋の季節は秋です。集団でお見合いをする鳥で、強いオスがメスへの求愛権を得ます。高い枯れ木などの目立つ場所に数十羽から数百羽が群れを作り、目立つ場所でオス同士がけんかを繰り広げるのです。
勝ったオスは晴れてメスに求愛し、つがいとなります。つがいとなったオスとメスは常に行動を共にするほど仲良しです。
一方で負けたオスは次の求愛権をかけてまた戦います。
カワラヒワの子育ての様子
カワラヒワは巣の周りに小さい縄張りを持つものの、いくつもの巣を縄張りに隣接させてルーズコロニーと呼ばれる集団を作ります。ルーズコロニーをつくることで集団で天敵から巣を守りやすくなるだけでなく、エサも見つけやすくなるなどの理由が考えられるというのが通説です。
つがいは仲睦まじく子育てをします。メスが抱卵していればオスがエサを運び、ヒナにはつがいでエサを運ぶのです。ヒナは14日ほどで巣立った後、親から生きる術を学んで早々に独立します。
子育ての様子はこんな感じです。
カワラヒワのヒナを見つけたら?
ヒナは稀に巣から転落してしまうなどの事故が起こります。さらに巣立ったばかりのヒナはまだ飛ぶのもそこまで上手ではありません。もしそのようなヒナを見つけたら、驚かさないようにハンカチなどでそっと包むように持ち上げます。
問題はその後です。そのまま家に連れ帰ってはいけません。すぐ近くでそれなりに高さがあり、物陰になっている木の枝などにつかまらせてすぐに離れましょう。ヒナが巣から転落した場合、親鳥が近くで見守っているものです。そのまま連れ帰るのは得策ではありません。
さらにカワラヒワは「鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)」によって保護されています。許可なく連れ帰ると違法行為になりかねないのです。
もしヒナが弱っていたり、しばらく離れた所から観察していても親鳥が来なかったりした場合は、市役所の環境課などに連絡を入れて指示をあおぎましょう。もしそのまま放置するよう指示されたときは残念ですが従ってください。自然に生きるものは自然の掟の中で生きるべきもの。それが鳥獣保護法の理念です。
納得いかないこともあるかもしれません。しかしかわいそうに感じて連れ帰っても育てきれないことがほとんどです。動物病院に連れていっても診察できるとは限りません。それが野生動物保護の難しさでもあるのです。
カワラヒワの仲間
日本では渡ってくる種類も含めて3種の亜種が確認されています。
コカワラヒワ
一般的にカワラヒワと呼ばれているのがこのコカワラヒワです。北海道などの寒い地域では夏鳥や漂鳥として暖かい地方に移動します。
オオカワラヒワ
日本には冬鳥として渡ってくる大柄なカワラヒワです。体色は全体的にやや薄め、頭部から肩にかけては灰色がかります。
オガサワラカワラヒワ
2020年にDNA鑑定によって遺伝的にも形態的にも異なる種であることが判明した日本固有種です。小笠原諸島にのみ留鳥として分布し、環境省のレッドリスト絶滅危惧IA類(CR)及び国内希少野生動植物種(種の保存法)に指定されています。
人間に持ち込まれた猫やネズミなどの外来生物による捕食や環境破壊によって数を減らし、早急の対策を必要とする希少種です。
カワラヒワのこんな動画はいかが?
カワラヒワのいろいろな顔を集めてみました。
みんなで仲良くお食事
群れでのお食事風景です。
巣材集めに必死です
素敵な巣を作るためには努力を惜しみません!
ヒマワリの種が大好き!
器用に割って食べる様子をどうぞ。
身だしなみにだって気を使っています
水浴びの様子をどうぞ。
もちろん羽繕いもしますよ。
スズメだけじゃない!かわいい隣人
カワラヒワはとても身近にいる小鳥です。しかし意外と振り向いてもらえないかわいそうな鳥かもしれません。もし黄色いラインの入ったおしゃれな羽の小鳥を見つけたら、ぜひ身近な隣人として受け入れてあげてください。