ふきのとう【庭の草木や花々】
春らしい陽気が日差しに感じられるころ、庭のあちこちで芽を出し始めるふきのとう。1年中ほぼ放置のため小粒ばかりですが、その香りの強さは採りたてならではです。春の訪れを告げるふきのとうについて、気まぐれに調べてみました。
ふきのとうって何?
実はふきのとうという植物はない
ふきのとうは山菜としても知られているフキの花です。北海道から沖縄県まで広く分布し、丘陵地や野山、草原などのやや湿った場所でよく見かけます。
ふきのとうがフキの花と聞いておどろく方も多いことでしょう。しかしふきのとうが開いて花を咲かせた後、同じ地下茎からフキの葉が伸びてきます。ふきのとうがフキと同じ植物ということの証明です。
ふきのとうの花言葉
花言葉は「愛嬌」「待望」「仲間」「真実は一つ」です。
「愛嬌」「仲間」は複数の花がまとまって芽吹くことから、そのほほえましい姿を例えたものです。
「待望」は春一番の味覚の一つとして、待ち焦がれる存在であることからつきました。
しかし「真実は一つ」については語られていません。
ふきのとうには怖い花言葉も
その花言葉は「処罰は行わなければならない」です。
由来はふきのとうには自然毒が含まれているため。ある意味理にかなった花言葉です。
本体のフキはどんな植物?
フキはキク科フキ属の日本原産の多年草で雌雄異株です。そのためふきのとうには雄花と雌花があります。フキは土の上に茎を伸ばさず、地中に地下茎を広げて増殖する植物です。
※フキについてはこちらをどうぞ
ふきのとうが原因の花粉症に注意
フキはキク科の植物であるため、ふきのとうの花粉も花粉症の原因になります。
のどの痛みや、顔のはれ、発疹、腹痛、下痢、嘔吐とさまざまな症状が出るのが特徴です。ひどい場合にはアナフィラキシーショックが起こることもあります。
原因となる花粉はふきのとうの雄花で作られます。加熱してもアレルギーの予防にはつながりません。アレルギーが出た場合には、「雄花は絶対に食べない・近づかない」ようにすることが大切です。一方でフキは薬用植物としても利用されます。夏から秋に根茎を掘り出して天日干しするのです。「蜂闘菜(ほうとうさい)」と呼ばれる生薬ですが、強い毒性も持ちます。正しい知識を持たずに口にするのはやめましょう。
ふきのとうの雄花と雌花の違いは?
雄花は黄色みが強く、おしべをブラシのようにいっぱい出します。
雄花に対して雌花はつぼみを開くことなく、白いめしべを数本出すだけです。
慣れれば一目で見分けがつくようになります。
ふきのとうには毒がある
ふきのとうには「ペタシテニン(別名:フキノトキシン)」と呼ばれる、ピロリジジンアルカロイド類の毒が含まれています。このペタシテニンは肝臓への毒性が強く、食べ過ぎると肝がんの原因になるといわれている成分です。最も多く含まれているのは地下茎の部分なので、決して食べないようにしましょう。
ふきのとうは山菜の一種
ふきのとうの旬はいつ?
旬の時期は地域ごとに異なります。
春の訪れが早い西日本では1~2月ごろが旬です。関東や東日本では2~3月ごろに、北海道や雪の多い地域では3~5月までが旬となります。
このように土地によって旬の時期に大きなずれがある山菜です。
ふきのとうの選び方
ふきのとうは鮮度が命の山菜のため、とにかく新鮮なものを選びます。摘みたてのものは香りがすがすがしく、えぐみも少ないです。
しかし香りもえぐみも時間が経つとともに変化します。
まず鮮度が落ちるとアクが強くなるのが特徴です。苦みやえぐみが増して風味も落ちてしまいます。
見分け方は根元の切り口を確認してください。黒く変色していないものが鮮度の良い証拠です。
鮮度以外で確認したいことは、大きくなりすぎると苦みが強くなります。取り囲む葉のすき間から、花芽が見え始めるくらいまでのものを選びましょう。ふきのとう全体にしまりがあり、中のつぼみも硬く閉じたものがおすすめです。
ふきのとうの採取の際はよく似た有毒植物に注意
ふきのとうと同じころに芽を出す植物にフクジュソウがあります。このフクジュソウは有毒のため、山菜取りに行ったときには間違えないよう注意しましょう。
もう一つ注意したい有毒植物に「ハシリドコロ」という植物の芽があります。全体が毒性が強く、最悪の場合は死亡した例もある怖い毒草です。ハシリドコロは別名「キチガイイモ」「キチガイナスビ」と呼ばれ、間違って食べた人が幻覚症状を起こして走りまわるさまが由来になっています。
ふきのとうとハシリドコロとの見分け方
まずはふきのとうは綿毛で覆われているのに対し、ハシリドコロには毛がありません。またハシリドコロを触ったその手で目をこすると、目の瞳孔(どうこう)が開くためまぶしく感じます。
さらに明確な違いとして、ハシリドコロの芽の中にあるのは小さい葉です。ふきのとうは花芽なので中に蕾があります。
間違いを防ぐ方法として、夏の間にフキのある場所を確認しておくのもよいでしょう。
これらの違いがあっても、ふきのとうとハシリドコロの誤食例は非常に多いといいます。厚生労働省でも間違えやすい危険植物として、ハシリドコロを紹介して注意を呼び掛けているほどです。
ふきのとうの栄養
下茹での欠かせない野菜
ふきのとうにはピロリジジンアルカロイド類という肝毒性の強い物質が含まれています。この毒は水溶性のため、下茹ですることで減らせるのが特徴です。ふきのとうを調理する前には必ず下茹でをしましょう。下茹でをしたふきのとうにはどのくらいの栄養があるのでしょうか?文部科学省の食品成分データベースを参照し、見ていってみましょう。
カロリー
100gあたりのカロリーは31kcalと野菜の中ではやや高めの部類になります。フキそのもののカロリーは100gあたり7kcalなので、本来同じ野菜でもかなり差があるのが特徴です。
ビタミン
β-カロテン・ビタミンK・葉酸・ビタミンEを豊富に含みます。ふきのとう100gあたりに含まれる量は、β-カロテンが260μg(マイクログラム)、ビタミンKが69μg、葉酸が83μg、ビタミンEが2.4mgです。
β-カロテンは脂溶性の栄養素で、必要に応じてビタミンAに変化します。また活性酸素の発生の抑制や除去が期待できる栄養素です。
ビタミンKも同じく脂溶性の栄養素で、体の機能を正常に保つ働きをしています。特に骨にカルシウムを取り込むことを助けるため、骨粗しょう症予防に欠かせない栄養素です。
葉酸は水溶性の栄養素で、ビタミンB群に含まれます。DNA合成に関与し、胎児が健全に成長するのに欠かせません。赤血球の形成にもかかわるため、貧血予防にも貢献する栄養素です。ビタミンEは脂溶性の栄養素で、抗酸化作用を持つだけでなく過酸化脂質が作られるのも防ぎます。そのため動脈硬化の予防にも効果的な栄養素です。
カリウム
ふきのとう100gあたりに440mg含まれている栄養素で、細胞内液の浸透圧を調節して一定に保ちます。神経や筋肉が働くためにも欠かせない栄養素です。
また体液のphバランスを保ち、余分なナトリウムを体外に排出します。塩分の過剰摂取による高血圧を予防してくれるミネラルとしても有名です。
食物繊維
ふきのとう100gあたりには水溶性食物繊維が0.9g、不溶性食物繊維が3.3g含まれています。食物繊維は第6の栄養素とも呼ばれ、体内での有用な働きに注目が集まっている成分です。
人間の消化酵素では消化できませんが、それゆえに腸内の余分な成分を吸着し、体外に排出します。便の体積を増やして便通を整え、腸内細菌のエサとなって腸内環境も整える成分です。
【栄養素参考資料:厚生労働省e-ヘルスネット】
ふきのとうならではの栄養素
- ケンフェロール(苦み成分):免疫機能を強化する
- フキノリド(香り成分):消化液の分泌を促進し、胃腸の働きを助ける
【栄養素参考資料:日本クリニック株式会社】
ふきのとうの楽しみ方
まずは下処理から
ふきのとうの毒成分は、下茹でしてあく抜きをすることで摂取量を減らすことができます。
まずは塩を加えて沸騰したお湯にふきのとうを入れましょう。キッチンペーパーなどを落としぶたに3~4分ほど茹でます。茹でたらすぐに冷水に移してしばらくさらせば、あく抜き完了です。ふきのとうに含まれる毒成分は、どのくらいまで摂っても大丈夫なのでしょうか?目安として、1日でふきのとうを350g以上食べなければ人体に影響はありません。だからといって食べ過ぎないように注意してください。
ふきのとうの天ぷら
ふきのとうといったら、真っ先に思い浮かぶ料理の一つがこの天ぷらでしょう。サクッとした衣とふきのとうのほろ苦さが癖になる一品です。
そんな天ぷらでも豆乳を使った一工夫レシピはいかがでしょうか?
ふきのとう味噌
こちらもふきのとうの料理として、ご飯のおかずにもお酒のあてにも大活躍の一品です。
しかしふきのとう味噌というと、どうしても味噌の色で茶色一色になりがち。ふきのとうの色が活かされないのは残念です。
そこでふきのとうの色にこだわった、ふきのとう味噌はいかがでしょうか?
ふきのとうの保存方法は?
生で保存したいときには、乾燥を防ぐため密閉容器に入れてから冷蔵庫で保存します。それでも傷みが早いため、もっても数日がいいところです。そのためあく抜きをしてから冷凍保存にするとよいでしょう。使いたいときには自然解凍で大丈夫です。
ふきのとうは春と共に
我が家でのふきのとうは、陽気が春めいてきたときから旬を迎えます。小さい芽ばかりですが、そのまま刻んで味噌汁に散らすと、香りが一気に広がり最高です。
春の香りを毎年くれてありがとう。